2012 Fiscal Year Annual Research Report
憲法学史の新たな地平--グロティウスからスピノザまでを貫く「啓示の媒介者の問い」
Project/Area Number |
23830014
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福岡 安都子 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (80323624)
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Project Period (FY) |
2011-08-24 – 2013-03-31
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Keywords | グロティウス / スピノザ / ホッブズ / 人権 / 主権 / オランダ / 検閲 / 思想・良心の自由 |
Research Abstract |
何故、スピノザやホッブズは共通して、国家の「主権」の限界や「思想・良心の自由」といった問題を論ずるに当たり、預言者や聖霊など、神の啓示を人々に媒介する存在について分析するという、現代の目からは迂遠と映る議論枠組を用いるのか。 本プロジェクトではこの議論枠組を「啓示の媒介者の問い」と名付け、その歴史的コンテクストについて調査を行った。その結果、オランダにおいてホッブズが盛んに読まれた1650~1660年代(それは同時にスピノザの活躍時期である)から半世紀遡る1600~1610年代のホラント州に生じた、国家・教会関係の再定義を巡る論争が、特にこの議論枠組の在り方を大きく規定した可能性が強いという展望が得られた。即ち、同論争で活躍したグロティウスとその同時代人の著作をこの観点から分析した結果、「神の直下にあってその意思を受領し他に伝える立場にあるのは誰か――主権者のみか、主権者と聖職者の両方か」という、上記の「啓示の媒介者の問い」に密接に関わる問題が、論争の要として明確に意識されていたことが史料に即して示された。 国家と教会の関係のみが問題であったグロティウスの時代と、両者の関係に加えて哲学者にとっての思索の自由が焦眉の問題となっていたスピノザの時代とで問題状況は変化している。しかし同時に両者のグループは、聖職者を神法の特権的解釈者と見なす観念を重要な批判対象に据えているという点で関心を共有している。この時代、グロティウスらの知的遺産は新しい状況に合わせて再解釈されたのではないか。 以上のような展望はなお未解明の部分を残すが、これまで解明できた範囲を英語論文Hobbes and Spinoza in the Dutch Controversies of jus circa sacraとして集約中であり、これを2013年中にフランクフルト大学に博士論文として提出する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(1 results)