2011 Fiscal Year Annual Research Report
法律相談過程における心的概念の意義と機能:臨床心理学的法実践の法社会学
Project/Area Number |
23830100
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
山田 恵子 京都女子大学, 法学部, 講師 (80615063)
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Keywords | 法律相談 / 法の心理学化 |
Research Abstract |
本研究は、「心的概念」(感情)の法律相談過程において果たす役割について、法社会学的観点から理論的・経験的に解明することによって、(1)真に機能的な法律相談の在り方について理論化を図り、さらに、「法の(臨床)心理学化」という近時の理論的・実践的潮流を視野に入れることで、(2)臨床心理学的手法に基づく法運用のインパクトを適切に評価するための指標を得ることを狙いとするものである。 本年度は当該目的に照らして、理論的及び経験的側面に関し、次のような研究を行った。 1.理論的研究 隣接領域、すなわち臨床社会学および臨床心理学等における「心理学化」の議論について、資料を収集し検討を加えた。とりわけ、それら領域に共通するより一般的・包括的な心理学化の概念・議論と法社会学における心理学化の概念・議論との異同を整理することで、法制度内部構造における心理学化の契機・特質を析出するための手掛かりを得ることに努めた。 2.経験的研究 法の心理学化の一形態であると考えられる「リーガル・カウンセリング(LC)」の理論を学習・習得した弁護士を対象として、法実務過程(具体的には、主として法律相談場面、付随的に陳述書作成、交渉、調停、訴訟等の場面)に、(1)LC概念の影響が及んでいるか否か、(2)及んでいるとすればそれはいかなる影響か、についての定性的ヒアリングを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H23年度に予定していた経験的調査について、インタビュィー予定としていた某弁護士事務所から東日本大震災の影響もあり許諾を得ることが出来なかった。また、それに代替する弁護士インタビュー調査の日程調整が大幅に遅れたため、データの収集・分析に関し、やや遅れている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度の研究から新たに得られた、臨床心理学的法実践における「LC概念の拡散化」および「弁護士の価値の多様化」という問題事象を研究対象に追加し、データ収集を継続・補完するとともに、理論的研究と統合させることで、臨床心理学的法実践のインパクトを分析したい。 なお、昨年度進めた研究において、臨床心理学的手法は、法律相談それ自体でなく、それ以外の法実践のあり方に強い影響を与えていることが確認された。したがって、本年度の補完調査は、当初予定していた(データから得られる知見の一般化可能性を検証するための)大都市部と地方部の比較調査を行う代わりに、臨床心理学的法実践の概念と内実について法律相談過程以外を焦点化する形で補完調査を行うことで、臨床心理学的法実践のインパクトの実態をより詳細に分析することにしたい。
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Research Products
(1 results)