2011 Fiscal Year Annual Research Report
裁判員制度における評議コミュニケーションの体系的理解に向けた社会心理学的研究
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23830112
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
村山 綾 関西学院大学, 文学研究科, 博士研究員 (10609936)
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Keywords | 裁判員制度 / 評議コミュニケーション / 社会的影響 / 意見変容 |
Research Abstract |
本研究の目的は、裁判員裁判のような専門家と非専門家による評議コミュニケーションの特徴や評議中に生じる問題を社会心理学的側面から明らかにし、よりよい評議コミュニケーションシステムを提言することである。平成23年度は、評議における専門家の社会的影響の発生過程を説明する社会心理学的モデルの不足を解決することを目指して、両者の合議過程で生じる言語・非言語行動を詳細に検討するための評議実験を実施した。 裁判員制度における評議コミュニケーションの特徴を体系的に理解するために、まずは実際の評議において何が問題となっているのかについて数人の専門家と議論した。その結果、当初計画していた評議内容について、学生の処分事案ではなく、実際の裁判員裁判で無罪判決が出た覚せい剤密輸事件をシナリオ化し、評議の題材として使用した。シナリオ化に際しては、法科大学院の学生および法学部の刑事訴訟法が専門の教員の協力を得た。また、実験要因は専門家と非専門家の事前意見分布(3水準)に加え、評議スタイル(評決主導型と証拠主導型の2条件)に変更した。これらの変更を加えることで、より裁判員制度の評議に近い実験状況を設定することができたと言える。 そして、2011年10月から11月にかけて、専門家と非専門家による評議を想定した実験室実験を実施した。分析の結果、(1)裁判官役と反対意見に判断を変化させる参加者よりも、同一判断に意見を変容させる参加者が多く、(2)評議後に裁判官と同一意見だった参加者は、評議前の判断の確信度よりも評議後の確信度の方が高くなっていた。実験結果の一部は、すでに学術雑誌に投稿済みであり、計画どおりに研究は進行している。今後は言語・非言語データの分析に着手する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の大きな目標は、裁判員制度を模した評議コミュニケーションの実験実施と、言語・非言語行動分析に向けたデータ整理であり、これらは順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、得られた言語・非言語データを取りまとめ、当初の目的である統合的分析を進めていく予定である。また、平成24年度の社会心理学会・グループ・ダイナミックス学会での研究発表を予定しており、査読付き学術雑誌への投稿(すでに1本投稿済み)も引き続き計画している。
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