2011 Fiscal Year Annual Research Report
アーベル多様体に関する有限性とガロア表現の分類について
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23840028
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小関 祥康 九州大学, 大学院・数理学研究院, 博士研究員 (00614041)
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Keywords | アーベル多様体 / ガロア表現 |
Research Abstract |
本研究は,Liu加群と呼ばれるガロア表現を分類する加群に関しての性質を調べ上げ,ガロア表現の性質を調べることに応用することが狙いの中の一つだった. 今年度の研究では,主にねじれLiu加群の成す圏の,圏としての性質を調べた.まず,ねじれLiu加群の成す圏は,Liu加群の高さを十分小さいものに限った場合にはアーベル圏となるが,十分大きい高さを持つLiu加群まで含めた場合,一般にはアーベル圏にならないことを確認した.更に,異なるLiu加群が同じガロア表現を与える場合があることを確認することができた.これは本研究の課題名にもあるガロア表現の分類という観点からは,単純な意味でのLiu加群を考えるだけでは不十分であることを意味している.そこでこのような事態を省くために,Liu加群の中で「極大なもの」,「極小なもの」という概念を定義し,極大なLiu加群あるいは極小なLiu加群に限れば,異なるLiu加群は異なるガロア表現を与えるということを示すことができた.また,極大なLiu加群,極小な-Liu加群に限ればそれらの成す圏はアーベル圏になることも確認できた.さらに,極大の概念と極小の概念はCartier双対により結びつくことまで確認できた.研究においては,このような極大極小理論を与えるために,エタールLiu加群と呼ばれる新しい概念を定義した.これは多くの数学者たちによって非常によく研究されている,Fontaineによって1970年代に与えられていた理論の,Liu加群側での類似といえるものとなっている.上述の理論は,ねじれLiu加群に付随するガロア表現を線形代数的に考察する際に役に立つことも分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はアーベル多様体に関する有限性予想とガロア表現の分類問題の二つが主なテーマだった.前者に関しては大きな進展が得られなかったが,後者に関しては想定以上の結果が得られている.したがって(2)が妥当であると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
まずはアーベル多様体の個数の有限性予想であるRasmussen-Tamagawa予想に取り掛かりたい.初めにアーベル多様体が1次元の場合,次に一般次元の場合の順序で取り掛かる.同時に,今年度得られたLiu加群に関する結果をガロア表現の考察へと応用する.具体的には法p表現がいつcrystalline表現に持ち上がるかといった問題を考えることとする.Liu加群を用いればこのような問題が線形代数的に考察できることがすでに確認できている.
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Research Products
(7 results)