2011 Fiscal Year Annual Research Report
リン酸塩ガラス電解質を用いた中温作動燃料電池の開発
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23850021
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
鷲見 裕史 独立行政法人産業技術総合研究所, 先進製造プロセス研究部門, 研究員 (80613257)
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Keywords | 燃料電池材料 / ガラス / 電気化学 / 省エネルギー技術 / エネルギー変換プロセス |
Research Abstract |
リン酸塩ガラスはプロトン伝導性を示すことが知られているが、これまで添加元素が導電率に与える影響について詳しく調べられていなかった。本研究では、xmol%BaO-(40-x)mol%ZnO-60mol%P2O5ガラスに着目し、固体MRやラマン分光によってガラス構造を分析し、プロトン伝導性との相関について検討した。 31PMAS-NMRスペクトルにおいて、-30ppm付近にメインピークが現れ、BaO-ZnO-P2O5ガラスの基本骨格は架橋酸素数2のメタリン酸構造(Q2)であることを確認した。x=10のガラスでは0ppm付近にオルトリン酸構造(Q0)、-10ppm付近にピロリン酸構造(Q1)に起因するピークがそれぞれ強く表れたことから、BaとZnの共存下では-O-P-O-結合の一部が切断されていることが考えられる。また、ラマンスペクトルにおいて、700cm-1付近に-O-P-O-結合の対称振動に起因するピークが、1150cm-1付近にP02結合の対称振動に起因するピークがそれぞれ現れた。Baの添加によってそれぞれのピークが低波数側にシフトしたことから、-O-P-O-の結合力が弱くなったことが予測される。また、x=10のガラスではP02ピークの強度が低下しており、非架橋酸素の増加が示唆された。ZnO,BaOの配位数はそれぞれ4,8であることから、異なる配位数のZnとBaが共存する条件では-O-P-O-結合が切断されやすくなることが考えられる。ラマンピークシフトはプロトン移動度に、P02ピーク強度はプロトン濃度と相関があると考えられ、実際x=10のガラスが最も高い導電率を示すことを確認した。ガラス構造と導電率の相関を明らかにしたことにより、今後更なる高プロトン伝導性の実現が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
固体NMRやラマン分光等によってガラス構造の解析を行うことができ、かつ交流インピーダンス法等によって導電率や電気化学特性との相関付けができたことから、高プロトン伝導性電解質材料の開発に向けておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
燃料電池等、実用電解質材料としてリン酸塩ガラスを用いるためには、さらなるプロトン導電率の向上が望まれる。今後は、BaやZn以外の添加元素の効果についても調べるとともに、P2O5濃度や合成温度等の最適化によって、高プロトン伝導性電解質材料を開発する。また、センサーや燃料電池等の電気化学デバイスの実現に向けて、ナノ電極製造プロセス技術の確立にも取り組む。
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Research Products
(2 results)