2011 Fiscal Year Annual Research Report
固相メビオールゲル中で育成させる新規タンパク質結晶化技術
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23860028
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉山 成 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (90615428)
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Keywords | メビオールゲル / 固相ゲル中結晶化 / 創薬 / 分子設計 / アガロースゲル / タンパク質結晶化 / X線構造解析 |
Research Abstract |
薬剤とタンパク質との相互作用を、立体構造情報を基に議論し、生体内における種々の生物反応を考察することは、分子設計や創薬という観点から考えれば必要不可欠である。このような研究を行うためには、良質なタンパク質の結晶を作製する必要があるが、タンパク質結晶は豆腐のように脆く、非常に壊れやすい。そのため、技術的な問題となっていた。研究代表者は、これらの問題を解決するために、タンパク質の結晶化実験を完全に固化したアガロースゲル中(固相ゲル中)で育成させる新しい結晶化技術の開発にこれまで取り組んできた。しかし、固相ゲル中で結晶を育成させるためには、流動性のあるアガロースゾル溶液とタンパク質溶液を混合する必要があるが、アガロースのゲル化温度は通常35℃以下であるため、ゾル状態を維持できる35℃以上では、混合時にタンパク質が損傷してしまうことが問題であった。研究代表者は、アガロースゲルとは正反対のゾルーゲル温度相転移を起こすメビオールゲルを用いた結晶化技術が確立できれば、この問題が解決できると考え研究を行った。本年度は次の実験を行った。 本研究に使用する4種類のタンパク質サンプル(リゾチーム、エラスターゼ、グルコースイソメラーゼ、インシュリン)の精製プロトコールを構築した。サンプル純度には購入ロット間で差があるため、研究結果の再現性に影響を及ぼすことがしばしば問題となっていた。そのため、電気泳動によって純度を確認しながら、液体クロマトグラフィーによって精製を行った。さらに、精製リゾチームについては、固相メビオールゲルを用いた結晶化実験を実施した。その結果、非常に良質な単結晶を観察することに成功した。また1.2A分解能を超える高分解能データの収集にも成功した。メビオールゲルを用いた固体中でのタンパク質結晶化実験の成功は世界初である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究目標は、実験に使用する4種類のタンパク質サンプル(リゾチーム、エラスターゼ、グルコースイソメラーゼ、インシュリン)の精製プロトコールを構築し、ロット間のサンプル純度差を無くすことであった。計画通り、4種類のタンパク質サンプルの精製プロトコールを構築した。さらに、精製リゾチームサンプルについては、固相メビオールゲルを用いた結晶化実験を実施したところ、固相ゲル中で単結晶を育成させることに成功した。また、それらの結晶を使った、シンクロトロン放射光によるX線回折実験によって、1.2A分解能を超える高分解能データを収集することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、他の3種類の精製サンプルを用いて、固相メビオールゲル中での結晶化実験を行い、最適なゲル濃度、温度コントロール、およびタンパク質溶液との混合方法を決定することを目標とし、再現性を持った固相メビオールゲル中結晶化技術の確立を目指す予定である。さらに固相ゲル中で育成したタンパク質結晶を用いてX線回折実験(SPring-8またはPFへ出張予定)を行い、本技術の有効性を検証する。具体的には、固相メビオールゲル中で育成した4種類のタンパク質結晶の評価のための指標として、X線強度データの統計値である、R-merge, Resolution, Completeness, Mosaicityに設定する。さらに、それらの値を溶液中で成長した結晶と比較することによって、固相メビオールゲル中で育成した結晶化技術の優位性を評価する。
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Research Products
(1 results)