2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本植民地下の台湾・金瓜石における鉱山景観の形成と変容
Project/Area Number |
23860041
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
波多野 想 琉球大学, 観光産業科学部, 准教授 (60609056)
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Keywords | 鉱山景観 / 植民地 / 台湾 / 金瓜石 / 土地利用 |
Research Abstract |
本研究は、植民地の社会政治的状況と地理空間の関係に着目し、差別や不平等を伴いつつ編成された金瓜石鉱山の土地の利用と所有、および鉱山施設の建築的実態を考察し、植民地における鉱山景観の特質を明らかにすることを目的とするものである。平成23年度は、主に、現地における史・資料の収集に基づく、土地利用および土地所有の実態に関する復原的考察を行った。 金瓜石鉱山の土地利用と所有の状況を復原的に解明するための史料として、大正10(1921)に更新された地籍図と土地登記簿が現存しており、まず大正10年の地籍図をGISによって描き直し、土地登記簿に記述された内容(地目、土地面積、所有者、登記理由)の変遷を表に整理した。土地登記簿に記述された情報の整理によって、金瓜石鉱山の水南洞地区において、明治39(1906)年3月および5月前後、明治43(1910)年、大正5(1916)年、大正10(1921)年、昭和9(1934)~10(1935)年、昭和14(1939)年に、土地利用および所有の状況に大きな変化があったことが判明した。その上で、GISで描いた大正10年地籍図の内容に変更を加えることで、上記の7時期の土地利用及び所有の復原図を作成した。その結果、以下の諸点が明らかになった。 (1)鉱山開発が実行される以前の水南洞地区は主に田畑によって構成されていた。 (2)鉱山会社が土地の「鉱業化」を進める際、台湾人の土地を直接的に収奪するのではなく、半強制的かつ不等な土地賃借契約に基づく土地利用の既成事実化と公的権力による強制的な地目変更を通して、土地の所有権を得るに至った。 (3)鉱山会社は所有権を獲得した土地を「建物敷地」化することで鉱山開発の円滑に進め、また田畑としての利用を前提に細分化されていた土地を統合し、大規模施設の建設を促した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、台湾における土地行政および鉱業開発に関する基礎資料の収集・分析を進め、明治後半から昭和初期の金瓜石鉱山における土地利用および所有の実態を明らかにした点に研究の進捗がみられた。その進捗状況は、本年度の達成目標である史資料の収集および土地利用実態の復原的考察の進度に合致している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、鉱山景観の基盤となる「土地」を時間軸に対して垂直に切り取ることで得られる「断面図」としての土地の様態の復原、各年代の断面図を繋ぐことで得られる土地変容の軌跡、景観の構成要素となる鉱山施設の配置と建築的実態およびそれらの歴史的変容、の3点を主要な課題とする。前二者に関しては、今年度の研究として進めた。そこで来年度は、金瓜石鉱山における鉱山施設に配置に関する復原的考察と鉱山町の空間構成原理に関する分析を進める。
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Research Products
(1 results)