2011 Fiscal Year Annual Research Report
枯草菌の光ストレス応答に迫る?光センサー蛋白質YtvAの反応分子機構の解明
Project/Area Number |
23870015
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中曽根 祐介 京都大学, 理化学研究科, 特定研究員 (00613019)
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Keywords | YtvA / LOVドメイン / 枯草菌 / ストレス応答 / 光センサー蛋白質 / 過渡回析格子法 |
Research Abstract |
枯草菌由来の光センサー蛋白質YtvAの光反応分子機構の解明のため、まずその光センサードメインであるLOVドメインの反応検出を行った。主に用いた手法は過渡回折格子法であり、この手法では蛋白質の拡散係数変化や体積変化を溶液中で時間分解観測できる。解析の結果、LOVドメインは溶液中でダイマー・テトラマーの平衡状態にあり、ダイマーを励起すると他のダイマーと会合してテトラマーを形成し、テトラマーを励起すると解離してダイマーになるという複雑な反応を起こすことを分子レベルで明らかにした。さらにLOVドメインのC末端領域を含んだコンストラクト(LOV-linker)では、Iinker領域のヘリックス構造の動きが観測された。この構造変化はCD測定などでは検出されなかったことから、ヘリックスが壊れるような反応では無く、おそらく回転するような反応であると予想される。こうした回転運動がドメイン間相互作用を変えてシグナル伝達を達成すると考えられる。YtvAは枯草菌の光ストレス応答に重要な蛋白質であり、先行研究によると塩濃度が高い条件ではその感度が上昇するという報告がある(塩ストレス応答)。この応答を分子レベルで議論するために、様々な塩濃度条件下での測定も行った。その結果、塩濃度が高い条件ではダイマー構造が安定化される様子が観測され、こうした会合状態に対する塩効果がYtvAの光感度を調節していると考えられる。また全長YtvAの光反応測定も始めており、その信号伝達に重要と考えられているGTPとの相互作用検出も行ったが、GTPとは結合せず蛍光標識したBODIPY-GTPとの相互作用のみが観測された。このことからBODIPYの蛍光観測による先行研究で報告されていたGTP結合機能はBODIPY領域との非特異的な相互作用であるという確信を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、23年度中にYtvA全長試料の測定まで終わらせる予定であったが、現在LOV、LOV-linker試料の解析が終わった段階で全長蛋白質の反応ダイナミクス解明には至っていない。しかし、YtvAがGTP結合蛋白質ではなかったという確認や、塩ストレスに対する応答を捉えたという点では当初の計画より進んでいるため、全体としてはおおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず全長蛋白質YtvAの反応機構の解明を行う。さらに塩濃度を振った実験を行い、全長蛋白質でも明確な塩効果が観測されるかを確認する。また平成23年度までの研究によりYtvAがGTP結合蛋白質ではないということがわかったが、本年度ではYtvAの信号伝達先を明らかにする。特にストレス応答機構の初期段階に存在するRsbRA蛋白質との相互作用に注目した実験を行う。その後、UV光を用いた光誘起逆反応を捉え、これら分子レベルでの反応が持つ生理的意味の検証を行う。
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Research Products
(2 results)