2011 Fiscal Year Annual Research Report
最期まで「自宅で療養したい」という思いを支える在宅ケア支援モデルの検討
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23890228
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Research Institution | Kyoto Koka Women's University |
Principal Investigator |
鮫島 輝美 京都光華女子大学, 健康科学部, 講師 (60326303)
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Keywords | 在宅ケア / 終末期 / 自宅療養 / 支援モデル |
Research Abstract |
本研究の目的とは、「在宅でできるだけ長く療養し、死を迎えたい」と希望する患者や家族を支える支援の在り様について関係論的立場から、1つのモデルを提示することである。 平成23年度は、a)文献検討、b)インタビュー調査:医師1名、看護師1名、c)フィールドワーク平成23年11月~平成24年1月、訪問診療に計6回同行し、フィールドノートを作成、認知症居宅介護研究所の勉強会に参加し、内容をデータ化した。以上、前年度の調査によって、以下のような分析の視点が示唆された。 ・既存の研究では、療養の場として在宅が実現可能な場として認識されるために必要な条件は(1)本人・家族の明確な意志表示、(2)社会的なサポートネットワークの存在(家族の介護力も含む)、(3)多様な病状に対応してくれる医療ケアの存在、(4)本人・家族のニーズを社会資源に結びつけるケアマネジメント、と考えられている。 ・療養者が、在宅を希望したとしても、「家族の介護負担が大きい」などの理由で、実現可能性は低いと認識されている。そのため、緊急時の対応や、在宅医療・介護のサービスが整い、在宅療養の環境が改善され、家族の負担が軽減される必要があるが、逆にそういった前提が在宅移行の障害となっている。 ・しかし、条件がすべて整わない状態でも、在宅療養は可能である。それは、本人や家族の不安がすこしでも改善され、「在宅でも看ることができる」という【安心感】を感じられることである。現在「安心できる在宅医療」とは、病院という「治療に特化された環境」に、どこまで「在宅が近づけるか」が前提となっている。しかし、在宅は「生活の場」である。病院の意味を在宅に持ち込むことで、齟齬が生じ、本入や家族が不安を感じているといえるのではないか。 ・O医師の実践は、その齟齬をずらし、生活の場にふさわしい「療養」の意味付けを積極的に行うことで「安心感を与えている」と考えられる。(798字)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年度は、実質上研究調査のスタートが11月であり、そこからの5ヶ月で、前述のような分析の示唆を得ることができた。すでにH24年度の方向性と調査計画はできており、前半は調査を中心に行い、後半はその調査結果を分析してまとめる作業に集中できると考えている。また、後半には学会発表だけでなく、論文にまとめていくことも平行して行えると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の問題意識をふまえて、今年度の調査で明らかにしたいことは、(1)家族自体が、O医師の在宅医療を受ける中で、「何が安心感として感受されているのか」、(2)看護師は、O医師の往診の特徴をどのように捉えているのか、(3)医療制度と介護制度が共存している場としての在宅の意味、である。そのために、家族・看護師・ヘルパー・ケアマネジャーへのインタビューを試みる。また、現場の実践家たちが医療制度と介護制度が共存することによって感じている「困難」について、調査し、そこから、在宅の今後の有り様について構造的に分析・考察する予定である。現時点での問題点は、ソフトを用いた言説分析を行うためのデータと、調査で収集したデータがそぐわない可能性があるので、見識ある研究者に相談する予定である。
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Research Products
(1 results)