Research Abstract |
今年(平成23年)度,茅野市4校の中学1年生511名を対象に6月に行ったアンケート調査の結果,80%の生徒が「中学校の英語が楽しい」と答え,主な理由はゲームなどの活動ではなく,「分からなかったことが分かった」という課題解決の達成感からであった。一方,「授業で困っていることがある」と答えた生徒は14%おり,理由は「書くことが難しく覚えられない」というものであった。学年が上がり「書けない」経験が重なると,学習に対するモチベーションが降下する傾向がある。生徒の成就感や満足感を大切にし,ライティングとスピーキング力を向上させるため,Swain(2006)の主張する'Languaging'即ち,「口頭で解説をしながら課題を読み進めていくことで学習者は,より正確で,深い理解に到達し,定着が促進される」という理論を基盤に,ライティング活動後のフィードバックとしてLanguagingを取り入れた。生徒が間違いを振り返り,理解を促進し自信を持つことでライティングとスピーキングの両方で,正確性も文の量も増加すると考え,検証授業を行った。 具体的には中学1年生23名を対象に,生徒がつまづきやすい3単現の'-s'を対象文法項目とし,1.生徒がひとつのテーマに従い,10分間で出来るだけ沢山の英文を書く2.教師は作文を回収し,エラー箇所に下線を引く3.生徒はエラー箇所についてペアで対話をしながら,修正する,という手順を取った。対話は全てICレコーダーで録音し,(1)メタ言語的説明を行い,主体的にエラーを発見した生徒,(2)ペアの発話を摸倣した生徒,(3)ペアの発話を黙って聞いていた生徒,にタイプを分け,ライティングは事前テスト,事後テスト,8日後の遅延テストを,スピーキングは事後テストと遅延テストを行い,生徒の書く/話す英文の質と量の変化からその効果を検証した。結果,全体でライティングにおいては,44%正確性が向上し,総文数も平均2文増加傾向が見られた。また,上記(1)~(3)のタイプ別分析では,どのグループも17%~68%正確性が向上した。しかし,遅延テストでは(3)の生徒だけ正答率が著しく下降した。一方スピーキングでの正答率変化は,対応のあるt検定により検証したが,有意差が見られなかった。 本研究を総括するならば,メタ言語的説明によるLanguagingが少なくともライティング力向上に効果があることを示唆するもので,これは,新学習指導要領の唱える「4技能を総合的に育成する」目標のうち,これまで不十分であった「ライティング能力の育成」に貢献できるものではないかと考える。しかし,対象文法項目が限られていたことから,今後はさらに多様な形態素について検証を行う必要がある。また,本研究で事前テストがなく,事後テスト,遅延テストが非有意であったスピーキング能力に関しても,再度検証を行う必要がある。
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