2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23904010
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Research Institution | 広島県立歴史博物館 |
Principal Investigator |
鈴木 康之 広島県立歴史博物館, 主任学芸員
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Keywords | 中世土器 / 官衙儀礼 / 白色土器 |
Research Abstract |
【目的】 日本中世において、土器が儀礼の器として大量に消費されたことが、近年の文献・考古資料の分析によって明らかにされつつある。しかし、こうした土器の意味づけが、いつごろ、どのような過程をたどって形成されたかについては不明な点が多い。そこでこの研究は、中世の前段階にあたる平安時代の土器の大量一括廃棄事例に注目し、儀礼の器としての土器の象徴的な意味の形成過程を探ることを目的に実施した。 【方法】 平安時代中期頃、各地の官衙関連遺跡において、土坑などから数十個体を超える数の土器が一括廃棄された事例が増えてくる。こうした土器の器種・形態・出土遺跡の性格などを調査・検討し、その特徴を抽出するなかから、土器が大量消費された背景を検討した。 【成果】 9世紀末から10世紀にかけて、各地で土器の大量一括廃棄事例が認められるようになる。これらは大量の土師質土器・黒色土器と、少量の灰釉・緑釉陶器や輸入陶磁器などで構成され、土器の形態には多くの共通点が認められる。したがって、特定の規範にもとづいて各地の土器様式が成立した可能性が高い。当該期の土器でそれを想定するならば、平安京の内裏などで儀礼的な用途に使われた白色土器をおいては考えられない。平安京における儀礼の土器のあり方が、国衙をはじめとする地方官衙の儀礼をつうじて、各地に拡散したものと考えられる。 これまで、中世土器の象徴的な意味は、京都の土師器皿との関係で説明されることが多かったが、その前段階に白色土器の影響が広くおよんでいたことが明らかになった。今後は、この研究で明らかにした平安期の土器のあり方が、中世へとどのように継承されていくのかを検討する必要がある。
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Research Products
(4 results)