2011 Fiscal Year Annual Research Report
近代北海道におけるアイヌ児童を対象とした私立学校に関する歴史的研究
Project/Area Number |
23907033
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Research Institution | 北海道立アイヌ民族文化研究センター |
Principal Investigator |
小川 正人 北海道立アイヌ民族文化研究センター, 研究課長
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Keywords | アイヌ教育史 / 私立学校 / 近代北海道史 |
Research Abstract |
○研究目的本研究は、近代北海道のアイヌ教育史の中でも私立のアイヌ学校の歴史に着目し、学校の設置に関わった関係者や行政の動向、子どもをそこに通わせたアイヌの意識などを解明していくことによって、学校の歴史そのものはもとより、当該時期のアイヌ教育政策の特質や、アイヌの教育に対する要求や関わり方の具体相などを明らかにすることを目指したものである。 ○研究の方法と経過本研究の対象となる私立のアイヌ学校については、一部の学校を除き、まとまった資料はほとんど確認されていない。従って本研究では、(1)先ず私立学校の所在確認も含めた資料調査に重点を置きつつ、(2)順次個々の学校ごとに実態分析を進めていく、という手順を採った。(1)については、主に札幌市(道立文書館、道立図書館)、函館市(函館市中央図書館)における新聞・雑誌その他の文書資料の調査と、大阪府和泉市(桃山学院大学)、京都市(大谷大学ほか)等におけるアイヌ教育に関わった宗教諸派(キリスト教の聖公会、仏教の真宗大谷派等)の報告書・機関誌等の調査を行い、(2)については、学校の所在地である釧路市、帯広市、登別市等において関係資料の調査を行った。調査を進める中で、(1)の調査により時間をかける必要が判明したことから、4月時点の計画よりも札幌市・函館市での調査を増やす一方、(2)においては、白糠町にあったキリスト教アイヌ学校と帯広市・本別町にあった仏教僧侶を教員とした学校に関する資料が釧路市及び僧侶の出身地である長野県小布施町に所在することが確認できたため、これらの地域への資料調査を加えた。 ○研究成果以上の調査を通して、(3)1880~90年代には道内十数カ所に私立のアイヌ教育施設があったことを明らかにし、それらの概況を把握するとともに、(4)白糠のキリスト教アイヌ学校など幾つかの学校については教員による記録の確認などを通してより詳しく実態を解明することができた。(5)特にこれまでのアイヌ教育史ではもっぱらキリスト教伝道者による教育事業が注目されてきたことに対し、十勝・釧路地方にあった仏教僧侶が教員をつとめた学校に関する資料調査を進めるとともに、学校設立以前の私塾的な教育の営みに地域のアイヌが関わった事例を見ていくことができ、当該時期のアイヌが新たな時代に向かうために学校・教育に積極的に関心を持っていた側面を明らかにすることができた。これらの研究成果の、一端は本文書「10」の学会発表・講演において報告したが、よりまとまった成果発表は2012年度に学会発表及び論文化を予定している。
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Research Products
(3 results)