Research Abstract |
本研究では,小学校社会科における概念探究過程の役割を見つめ直し,獲得した知識を児童が意味あるものと感じ,将来使える知識として育むための授業方法を考え実践することを目的とした。 社会科において概念とは,概念の意味や説明としての理論,つまり概念的知識を指し,それを問題解決的に学習し習得することが社会科の授業の柱である。しかし,概念の意味内容である概念的知識だけでなく,概念の名辞そのものを児童がとらえ意識できるようにしていくことも重要だと考える。例えば「特産物」は,児童に地場産業や地域の活性化など,地域を学ぶ意味を深めることができる。またそれは,関連するこれまでの学習や経験をつなげまとめるカテゴリーにもなりえる。 まずは,社会の重要なキーワードとして概念の名辞をとらえながら,社会の仕組みとしての知識を獲得する授業方法論を構成することで,児童が必要性を感じながら知識を獲得できる授業となるよう仮説を立て研究に取り組んだ。 次に,概念の定義を言語により表現された名辞とし,その意味内容,説明原理である概念的知識と区別して用いることとした。そして認知心理学における認知機能としてのカテゴリー化に着目し,ロッシュの分類学的水準における階層カテゴリーの存在を示す研究成果,マーフィンとメディンの理論ベースの概念観の考え方を基に,社会を構成する上で必要な一般概念を1つのキーワードとして社会事象をとらえながら,その概念が果たす社会的役割や意味を考える授業モデルを構築した。それは,学習材をカテゴリー事例とし,一般概念の適用により他の事例と同定する。さらにその一般概念をカテゴリー事例とし,新たな一般概念の適用により別の事例と同定していくという過程を辿る。これは複数にわたる包括的なカテゴリー化といえる。1度目の概念をカテゴリー化し,新たな概念をとらえるという意味で,この過程を本研究では「概念のカテゴリー化」と定義づけた。 最後に「概念のカテゴリー化」の授業方法理論を基に,小学5学年「やめられないかわらない!?かっぱえびせん♪」と「東日本大震災から見る情報化社会」の2単元を開発実践し,考察を行った。その結果「概念のカテゴリー化」は,カテゴリーの階層性を利用し,それを繰り返しカテゴリー化することで,児童同士の話し合いを中心に,学習材を通して上位カテゴリー(上位の概念)を導きだすことができた。さらに学習材の説明原理を上位概念の説明原理へと一般化することもできた。 結論として,この授業方法理論は,児童が社会に必要かつ重要な概念をとらえながら,その説明原理を学習材という具体を基に導き出せるという点で,有効な学習方法論といえる。
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