2011 Fiscal Year Annual Research Report
文学的文章を読む力を高めるために登場人物の「価値の転換」を体験する読みの研究
Project/Area Number |
23908032
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
羽場 邦子 広島大学, 附属東雲小学校, 教諭
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Keywords | 文学的文章を読む力 |
Research Abstract |
本研究では,中学年を対象として「対象化」の文学体験をさせる中で,文学作品を読むおもしろさを実感させ,人物の価値の転換を体験して児童の読む力を高める研究を行った。 ○前期授業実践「走れ」(東京書籍4年上) 本教材は,登場人物二人に価値の転換がある。二人の転換を読む中で,二人の関係も読むことができる。一次感想では「のぶよ」のみの記述が37名中32名,「のぶよ」「けんじ」二人の記述は37名中5名だった。また,「だれがどこで変わったか(転換したか)」という中心課題にも多くの児童が転換後の「のぶよ」のクライマックスの場面を答えていた。このような実態から転換が読み取りやすい「けんじ」を先に読み,その後「のぶよ」の転換を読んだ。また,二人の関係も読むことができた。学習後の感想では,37名中35名の児童が「けんじ」「のぶよ」の転換を記述した。学習後「だれがどこで変わったか(転換したか)」と問いにも,37名中34名が正しく答えることができた。3名は,二人が転換したと答えたがクライマックスの場面を記述していた。 ○後期授業実践「ごんぎつね」(学校図書4年下) 本教材は,昨年度実践している。昨年度とは異なる指導を行い,その結果を比較検討したいと考え選んだ。一次感想では,ごんと兵十の関係を記述した者が37名中30名,ごんのみの記述が7名だった。昨年度の実践では「ごんはどこで変わったか(転換したか)」「二人はわかり合えたのか」を中心課題にした。今年度は「だれがどこで変わったか(転換したか)」「二人はわかり合えたのか」を中心課題にした。ごんと兵十の転換を読む中で二人の関係も読むことができると考えたからである。「だれがどこで変わったか」では,学習前,37名中30名が二人を挙げた。ごんの転換を30名中28名が正しく答えていた。兵十の転換は30名全員が正しく答えていた。残りの7名はごんのみの記述だった。学習後は全員二人の転換を記述している。「二人はわかり合えたのか」では,学習前,37名中30名がわかり合えた。7名がわかり合えなかったとした。学習後は,わかり合えた25名,わかり合えなかった12名だった。昨年度は,学習後「二人はわかり合えかのか」で,わかり合えた20名,わかり合えなかった17名だった。昨年度はごんの転換のみを課題にしたが,今年度は二人の転換を課題とした。そのため,ごんと兵十二人に寄り添い読む事ができ,わかり合えたと記述する児童が増えたと考える。 本研究の成果として次の点を挙げる。ア.中心人物が複数の場合,中心人物の転換を読むことで人物の関係も読む事ができた。イ.中心課題を設定し転換を問うことにより,場面を区切って詳細な読みをするのではなく作品をまるごと読むことができた。
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