Research Abstract |
本研究では,日常に深く浸透するメディアを,社会構造や制度,そして,我々のモノの見方・考え方にも大きな影響を与える社会的構築物であると捉え,メディアが浸透する社会,いわゆるメディア社会において求められる思考力・判断力・表現力を育成する小学校社会科の教育内容を具体的に開発し,その意義について実証的に解明した。 最初に,メディア社会は,情報通信技術の発達による「拡張」とメディアによるコミュニケーション活動の「影響」によって構築された社会であることを指摘し,メディア社会は「デジタル化するメディア社会」「ステレオタイプ化するメディア社会」「イベント化するメディア社会」「コントロール化するメディア社会」の四タイプの社会構成に分かれることを明らかにした。 次に,イギリス,カナダのメディア教育論を踏まえ,社会科固有の学習指導論「メディア社会解釈学習」を提起し,メディア社会の社会構成に応じた学習モデルを設定した。 そして,それらの学習モデルに基づく教育内容を具体的に開発し,実証的に検討した。 本研究の結論は,次の三点である。 第一は,社会科特有のメディア・リテラシー学習は,メディアが存在する社会構造を追究課題とすることである。メディアではなくメディア社会の構造を学習対象とすることで,児童がメディアに対する批判性や対抗メディアを創造する可能性を明らかにした。 第二は,現代社会の変化に対応した小学校社会科における教育内容開発の必要性である。すでに多様な情報を獲得している現代の児童にとって,常識的な問題には価値を見出し難いのであり,新しい時代に対応した教育内容開発の必要性が明らかになった。 第三は,社会科の学習指導がより構築型へ移行する必要性である。本研究では,メディア社会の構造を解釈する学習を構成し,獲得した知識を解釈し,活用する場面を中心に構成することで,児童自身の新たな解釈を表出させることが可能になった。
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