Research Abstract |
○研究目的:豊岡市所蔵和算書の調査研究を通して,和算の歴史やその社会的背景・和算の特異性を研究し,和算を1つの文化と捉えて可能な限り教材化を図りたい。 ○研究方法:(1)和算書の解読・現代語訳を行う。また,現代解を行い,報告書・冊子等を作成し,市民に還元する。 (2)豊岡市所蔵和算書の内容を整理し,「地域の和算」として可能な限り教材化を行う。 ○研究成果:(1)豊岡市所蔵和算書38冊(内15冊は未見)について,解読・現代語訳・現代解を行った。その結果,「雑題五十問」「雑題五十問解義」「絳老餘算統術三・四」「絳老餘算統術五~七」「算梯三」「算梯求積門・差分」「接術」の7つの和算書については,報告書を豊岡市教育委員会に提出するとともに,豊岡市立図書館等へ寄贈することができた。7つの和算書は,いずれも初学者向けの教科書的なものであり,旧出石藩での和算教育の一端がうかがえるものであった。また,解読した和算書はいずれも写本であり,その原本は日本学士院と東北大学附属図書館に所蔵されており,実際に現地に赴いて文献の閲覧を行うとともに,複写して両者の比較検討を行った。その成果を,近畿和算ゼミナールで発表し,会員から貴重な助言や意見を多数いただくことができた。 (2)和算には相似の概念がほとんどないとされていた。今回解読した「接術」は,まさにその説を裏付ける内容のものであった。和算家は比を使って問題を解き,その発想の豊かさには驚かされたが,相似の考え方を使えば簡単に解ける内容のものであった。中学校においては,来年度から新学習指導要領が実施され,本年度はその移行期にある。3年生で,「相似な図形の面積比」「相似な立体の表面積比・体積比」を学習するが,「接術」の問題は,その考え方を使えば,中学生にも解ける問題であった。新潟大学人間科学部山田和美教授に直接指導を受けながら,教材化を進めていったが,残念ながら本年度は進度の関係で実施できなかった。来年度更に研究を重ねて,授業実践を行いたいと考えている。
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