2011 Fiscal Year Annual Research Report
スリットスキャンによる複数波長での分光撮像による太陽大気の立体構造の探求
Project/Area Number |
23914003
|
Research Institution | 埼玉県立浦和西高等学校 |
Principal Investigator |
坂江 隆志 埼玉県立浦和西高等学校, 教諭
|
Keywords | 太陽分光器 / スリットスキャン / スペクトロヘリオグラム |
Research Abstract |
現在、市販されている個人で購入可能な太陽観測用狭帯域フィルターはHαとCaKに限られており、その他の波長での太陽単色光観測は簡単にはできない。そこで、本研究では、教育用にも活用できる小型、高分散、高解像度の太陽観測用分光器を製作し、スリットスキャンによってさまざまな吸収線における太陽単色光画像が得られるようにした。製作した分光器は、波長分解能0.022nm、分散2.4nm/mmで、重量約7キロと市販の小型赤道儀に搭載可能である。リトロー配置された回折格子(1200g/mm、25×25mm、ブレーズ波長500nm)の1次光スペクトルを用い、回折格子の傾きを変えることにより眼視での観察のほか、CCDカメラを装着することで360nm~970nmの範囲で撮像観測できる。また、スリットを太陽の南北方向に一致させて分光器を固定し、日周運動により移動していく太陽を毎秒10フレーム程度で撮像(スリットスキャン)し、得られたスペクトル画像の吸収線上のピクセルデータを切り出して順番に並べると、太陽の単色光画像(スペクトロヘリオグラム)が得られる。この方法で、Hα、CaK,CaHのほか、G-band、Fe、Mg、Naの画像を作成した。Hα、CaKについては、市販のファブリペローフィルター太陽望遠鏡で撮像した画像と比較し、ほぼ同じものが得られることが確認できた。スリットスキャンは1ピクセル(0.03nm)の波長分解能があり、これは市販の太陽望遠鏡の透過半値幅(約0.1nm)より波長分解能において優れている。そのため、Hαの市販望遠鏡ではHα核部における彩層上部(高さ1500km、フィラメント、プラージュなど)とHα翼部の彩層下部(高さ200km、彩層ネットワーク構造)が同時に撮像されるのに対し、スリットスキャンではこれらを分離することができた。さらに、活動的フィラメントに対しHαでのドップラーグラムを作成し、視線方向の運動も確認できた。Hα、CaK,CaH以外の波長は、光球に近い領域を見ており、黒点以外の顕著な活動は見られなかったが、今後大きなフレアなどが起きた時、他では観測していない単色光画像が得られるものと期待できる。
|
Research Products
(1 results)