2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23915015
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
宮澤 俊義 静岡大学, 理学部, 技術専門員
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Keywords | クマムシ / 乾燥状態 / 放射線耐性 |
Research Abstract |
<研究目的> 緩歩動物クマムシは、体長1mm以下の微生物で深海から陸上の苔の中まで様々な所に多様な種が分布している。その大きな特徴は乾燥状態になると、体を樽状に変化させ100年以上長生きしたり、高温、超低温、真空、高気圧やどんな放射線にも耐えうる能力を持つと言われている。水に入れると元の姿に戻って動きだす。「最強の生物」と言われるゆえんである。しかしこのクマムシの極限状態のストレス耐性について、今まであまり調査・研究がなされて来なかったのも事実であり、その真偽の方は定かではない。そこで本研究ではクマムシの放射線耐性の能力に着目して、γ線照射装置を使用してクマムシの放射線耐性能力について調査する。またその他の環境ストレスの耐性の実験を行い、極限状態でのクマムシの能力について調査・研究を行う。 <研究方法> まず苔を採集して来てクマムシを探した。なかなかクマムシを発見できず大変だったが、大学内のハリガネゴケとギンゴケの中から、オニクマムシ・チョウメイムシの2種を見つける事が出来た。飼育を試みたが、困難を極め、2週間位で死んでしまうので、クマムシを見つけた苔の群落を一つの個体群として、そこからクマムシを供給して、以後の実験に使用した。クマムシを濾紙や寒天の上に乗せると乾燥状態になって体を縮め樽状に変化する。この状態のクマムシに放射線をはじめ様々な環境ストレスを与えて研究を進めた。 <研究成果> γ線照射装置で樽状のクマムシに様々な強さのγ線を照射した結果、4,000Gyまで耐える事が分かった。人間の致死線量は5Gyである。またγ線照射後のクマムシは寿命が縮まる傾向がみられた。さすがのクマムシも高線量の放射線ではかなりのストレスを受けたと思われる。その他の実験では、電子レンジで3分間加熱、冷凍庫で一晩凍らせる、ドライアイスで冷やす、液体窒素に浸ける実験を行ったがいずれも樽状から元の姿に戻って元気に動き出した。研究成果としてまとめると、クマムシは4,000Gyの放射線に耐える事が出来る。長寿命と言われているが飼育は難しく飼育下では短命である。高温、超低温の環境に耐える。以上の事が解明出来た。今後はクマムシの飼育系を確立してクマムシの個体数を増やし、様々な実験を進めて行くつもりである。
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