2011 Fiscal Year Annual Research Report
隕石中に見られる中空状炭素質ナノ粒子の生成過程:電子顕微鏡による模擬実験
Project/Area Number |
23916008
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
齊藤 碧 分子科学研究所, 技術課, 技術職員
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Keywords | 多環芳香族炭化水素 / ナノ粒子 / 電子顕微鏡 |
Research Abstract |
初期生命の材料供給者である可能性が論じられている中空状炭素質ナノ粒子は、46億年前の分子雲から太陽系形成初期に亘る低温環境で紫外線照射によって形成したと考えられている。この説に対し、我々はさらに昔の晩期型巨星の周囲での形成の可能性を示唆する結果を、多環芳香族炭化水素(PAH)のプラズマ改変実験で得ている。そこで、中空状炭素質ナノ粒子の生成過程つながっていく、宇宙における炭化水素分子の進化過程の一経路を提案することを目的に本研究を行った。 まず分子の生成過程を考えた。宇宙に普遍的に存在し、環境を反映して構造変化するため、天体の物理的・化学的情報を得られるPAH分子は、晩期型巨星の質量放出中で生成し、集まってクラスターを形成すると考えられている。ほとんどの分子生成には、ダストと呼ばれるナノ粒子が下地として必須であるが、逆にその高い触媒作用による分解過程も無視できず、相互作用の定量的な研究が必要である。そこでまずPAHと同様に晩期星周囲に多量に存在し、且つダストの主な材料であるFeやMg、SiがPAH分子に与える触媒効果について実験を行った。実験ではヘリウムガス中で、PAH蒸気をFeやMg、Si蒸気、又はナノ粒子と反応させた。 Feの存在がない場合には100nm程度のPAHナノ粒子が生成したが、Feが存在する場合には、表面がグラファイト層で覆われたFeナノ粒子が生成した。これはFeが持つ触媒作用によってPAHが分解された結果であると考えられる。また、PAH種によってこの表面のグラファイトの層数が異なることも明らかとなり、触媒効果の定量化が行える見込みとなった。
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Research Products
(1 results)