2011 Fiscal Year Annual Research Report
「茶道炭」製炭技術の工学的見地からの解明と,その利用による後継者育成支援
Project/Area Number |
23917005
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
阿部 文明 愛媛大学, 工学部, 技術系職員
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Keywords | 茶道炭 / 製炭技術 / 後継者育成 |
Research Abstract |
わが国独自の文化である「茶道」において炭が果たす役割は大きく,"お手前"の所作が示すとおり「茶道炭」には熱源としてだけでなく,見た目,火力,燃焼時間,匂いなど多くの要素が求められる.しかし,現在,茶道炭が焼ける技能者は全国で数名となり,技術の解明と伝承ならびに後継者の育成が急がれる.そこで本研究では,"勘の世界"である製炭技術を工学的観点から究明し,その結果を生産性の向上と後継者育成に活用することを目的とした.研究の成果を以下に示す. 炭材準備工程では,クヌギの伐採から窯入れまでに10日~2週間(期間は勘による)伐採現場で自然乾燥させるが,木材水分計による測定では樹幹部の含水率はほとんど変化しない.一方,表皮では約50%から20%程度にまで減少し,表面近傍では乾燥が進行していることがわかった.この乾燥によって炭化時の表皮の収縮率が小さくなり,表皮の剥離を防ぐと考えられる.なお,市販の水分計のセンサー部を改良すれば,勘を数値で示せ,容易に最適な乾燥期間が判断できる.炭化作業工程では,炭の出来具合に炭化時(特にリグニンが熱分解を始める300℃近傍から)の温度と昇温速度が大きく影響すること,それによって炭化率が20%から35%の範囲で変化することがわかった.初窯の「茶道炭」生産効率が高い理由は,窯構造材(土)中の水分の蒸発が昇温速度を緩やかにし,また窯の温度むらを抑えると考えられる.常時この状態を得るためには,窯構造の改良と,窯の温度管理が不可欠となるが,業の現場では上記改善は困難である.そこで,伝熱・燃焼など工学的知識を取り入れた実験窯の開発とその窯造りを後継者が経験すれば,多くの製炭技術が伝承できると考えている.その機会を待ち,今後も炭焼きへの関わりを続けようと思っている.
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