Research Abstract |
【研究目的】 科学捜査分野において用いられる印刷物中の印字のフォント名称の識別手法は,目視によるフォント形状の比較が一般的である.一方,同検査手法では対照するフォント数が数百種以上に上ることから,識別には多くの時間を要する問題点がある.よって,印字からフォント名称の候補をアプリケーションによりスクリーニング及びソート処理し,符合する確率の高いものから順に比較を行うことで識別の簡略化の実現を目的とした. 【研究方法】 印字に対して常に外接する四角形を回転させると,傾きに応じて四角形の面積が増減し,また,増減の幅はフォントの種類及び文字種ごとに異なる.この現象を利用して印字に外接する四角形をθ(θ=0,1,2...88,89)度回転させ,その面積に対する印字の画素数の割合,並びに,外接四角形の辺の比,印字の重心,印字の画線の太さを求め,同項目を指標としてフォント名称の候補をスクリーニングするアプリケーションを開発した。 次に,印刷物中の印字のフォント識別実験を行った.実験では被験者10名に対し,模擬脅迫文中の印字について,従来の手法である目視によるフォント形状の比較検査とアプリケーションを使用した検査を実施させ,識別に掛かる時間,識別率の比較及び難易度に関するアンケートを実施した.なお,実験で比較対象とした書体数は80書体である. 【研究成果】 実験の結果,目視によるフォント名称の識別では,検査に要した時間:5~10分,識別率:80%であったのに対し,アプリケーションによる比較では,検査に要した時間:3分以内,識別率:100%と向上した.なお,目視による比較では「形状の類似するフォントが見分けづらい」等の意見があったが,アプリケーションによる比較では「客観的でよい」,「使いやすく簡単な操作で識別できた」等の意見が得られた.これより同アプリケーションによるスクリーニングはフォント名称の識別において一定の効果があるものと判断された.
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