2011 Fiscal Year Annual Research Report
イネ科ササ類の野生集団における外部形態および遺伝的変異の解析
Project/Area Number |
23923009
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Research Institution | 自由学園 |
Principal Investigator |
大塚 ちか子 自由学園, 最高学部, 教員
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Keywords | タケ連メダケ属 / 葉身の形態変異 / アイソザイム変異 |
Research Abstract |
目的:申請者の勤務地である東京都東久留米市内で、市内に水源のある水系周辺を中心に、関東地方を中心に分布する野生のアズマネザサ(イネ科タケ連メダケ属)の外部形態および分子レベルの遺伝的変異を調査し、この地域の地史とあわせた自然誌的考察を目的とした。 研究方法:市内のメダケ属の植物の生育分布を、立入可能な緑地については、現場で生育状況および生育環境を調査し、外部形態と分子レベルの変異の調査用に試料を採取した。その他の場所では、外部からの目視にて調査を行った。外部形態には、自由学園にて主稈の上から2から4番目までの3枚の葉身の長さと幅を測定し、その平均値を用いた。分子レベルの変異は、杏林大学医学部にて等電点電気泳動法によるパーオキシダーゼのアイソザイム変異を調べた。 結果:本種(アズマネザサ)は、市内の畑地以外の緑地には広く分布していた。1960年代以降の都市化による大規模工事が行われた場所では、生育していなかった。また、1980年代から流路の直線化とコンクリート護岸工事の行われた河川では生育が認められないが、それらの河川の周辺の緑地には生育がみられた。 市内の3河川流域でのアズマネザサの葉身の幅と長さについては河川間に有意差が見られたが、その比率は、ほぼ一定で、有意差は見られなかった。 パーオキシダーゼの等電点電気泳動の結果は、3河川共通のバンドと河川固有のバンドが観察された。大きな河川改修が行われず、河川周辺の緑地、雑木林の残っている地域のアズマネザサ集団では、バンドパターンの変異が多い傾向がみられた。 考察:河川改修等の人工的な工事が行われた集団と、比較的自然環境が保全されている集団では、アズマネザサの分布の有無や、パーオキシダーゼの変異量に差が認められた。今回の予備的な観察結果からもアズマネザサの生育が、都市化や、河川の護岸工事後の生態系の変化の指標となり得ることが示唆された。(798文字)
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