2011 Fiscal Year Annual Research Report
房総半島南部におけるヒノキ漏脂病の実態に関する研究
Project/Area Number |
23925011
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
軽込 勉 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 技術専門職員
|
Keywords | 漏脂病 / ヒノキ / Cistella japonica |
Research Abstract |
(目的) ヒノキの造林において、10~30年生の林分に多く発病し問題となっているのがヒノキ漏脂病である。房総半島ではヒノキ漏脂病については1950年代に簡単な報告があったのみでこれまで詳細な発生報告は無かったが、近年、本病の発生が数ヶ所の造林地で確認された。よって、本研究ではヒノキ林分における漏脂病の現況調査と病原菌の分離による罹病の立証を目的とした。 (方法) 調査地は東京大学千葉演習林の人工林(約900ha)の内約240ha、計64小班のヒノキ林分を対象とした。まず、これら林分を、林齢、地位、施業履歴(枝打、間伐)を基にGISを用いて類別し抽出した10~40年生の林分8ヶ所において現地調査を行った。調査法は10m×10mまたは20m×20mの方形プロットを設定し、毎木調査を行い胸高直径、樹高を測定した。さらに罹病の程度を4段階(0:漏脂の兆候無し、1:何らかの漏脂症状がある、2:明らかな漏脂症状がある、3:罹病痕がある)で評価した。同時にGPSによる維持情報の取得もおこなった。また、発病の主因となっているCistella japonicaの分離のため、罹病木より菌をサンプリングした。菌は、アンチホルミンによる消毒後、25℃の環境下でPDA培地を用い培養分離を試みた。 (結果) 今回調査を行った結果、調査個体の2割以上が被害レベル2を超えた激害地は尾根筋より中腹に集中しており、漏脂病の発生要因に地理的要因が関係していることが示唆された。また、病原菌であるCistella japonicの分離試験では、菌の生長が遅いため、雑菌等が繁殖し思うような結果が得られなかった。しかし、今回の研究により継代維持していた株の入手ができたため、今後継続して分離試験を行うにあたり、大きく前進できた。現在、被害地域における環境調査を温湿度ロガーにより、継続的に記録をしている。今後、この環境調査の地域を拡大し、発病と環境との関係を検証したい。
|