2011 Fiscal Year Annual Research Report
肉牛生産における環境保全型畜産のための吸引通気式堆肥化システムの活用
Project/Area Number |
23925027
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
森田 昌孝 山形大学, 農学部, 技術員
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Keywords | 吸引通気式堆肥化システム / 繁殖牛 / アンモニア |
Research Abstract |
【目的】堆肥過程で大量に発生する環境負荷物質の一つであるアンモニアを堆肥化過程で回収・資源化する吸引通気式堆肥化システムが開発された。このシステムは堆肥から発生するアンモニアを硫酸溶液中で薬液脱臭させ、硫酸アンモニウム(回収硫安)を生成するというものである。これにより環境汚染の抑制,処理コストの低減化や循環型農業につながるとされ,その普及に期待が寄せられている。これまでの研究では苦情件数が多い家畜種堆肥での試験が行われ、多くの成果が得られている。しかし、黒毛和種繁殖雌牛(以下、繁殖牛)を対象とする試験は行われていない。繁殖牛は他の家畜種と異なり稲ワラ、飼料米を中心とした稲体すべてを活用した地域循環型の家畜生産に結びつけることが可能である。そこで、本研究では繁殖牛から排出される生糞尿を用いて、堆肥過程での回収効率ならびに堆肥化特性を明らかにするとともに回収された回収硫安を実際に水稲肥料としての活用を想定し、栽培試験を行い,繁殖牛を主軸としたアンモニア資源循環に関する評価を行うことを目的とした。【試験I】繁殖牛堆肥を堆積型発酵堆肥槽に慣行区(30t)およびシステム区(30t)を投入し実模試験を行った。その結果,繁殖牛堆肥では慣行区に比較し,システム区が発酵温度において短時間で高温域に達し,堆肥化期間を短縮することが可能であると示唆された。さらに水分低下がシステム区で大きく,戻し堆肥等の家畜敷料への再利用や低水分化による取扱性向上に貢献するものと考えられた。【試験II】システムより得られた回収硫安を用いて栽培試験を行った。供試品種は,飼料用品種「ふくひびき」と食用品種「つや姫」を用いた。施肥は回収硫安と市販硫安を追肥肥料として散布し,その差を明らかにした。その結果,ふくひびきではモミ重において回収硫安が慣行区に比較し有意に多くなった。それ以外については処理間に差はなく,肥料としての有効性が明らかになった。以上から,繁殖牛堆肥は吸引通気式堆肥化システムを活用することにより,良質堆肥を短期間で作成することが可能であり,得られた回収硫安も市販硫安と同等程度の肥効があることが明らかになった。
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