2011 Fiscal Year Annual Research Report
放牧による乳牛の健康性、及びその生乳の品質についての調査
Project/Area Number |
23925030
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山本 理恵 東北大学, 大学院・農学研究科, 技術一般職員
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Keywords | 乳牛 / 放牧 / 動物福祉(アニマルウェルフェア) |
Research Abstract |
目的 畜産業界の先進国である欧米諸国では、経済動物である家畜であってもその幸福を可能な限り追求しようとする、動物福祉(AW)の精神が広まりつつある。しかし日本国内ではイメージばかりが先行しており、例えば乳牛については広大な牧草地で放牧され美味しい牛乳を生産するイメージがあるが実際は首を繋がれ牛舎に閉じ込められる「繋ぎ飼い」でAWとはほど遠い管理をされている事も多い。日本でAWを浸透させるためには、消費者にAWの商品を積極的に購入してもらう必要がある。しかしAWに則った飼養管理を行ったからといって、その分割高になっては食味の向上や成分の変化など消費者にとっての有益な点が科学的に示されない限り購入層を増やす事はできない。今回の研究では放牧された牛群と牛舎内で飼われた牛群を調査し、その生乳の品質や健康性を比較検討した。 方法 ・健康性調査(一日増体重、繁殖成績など) ・生乳調査(乳量、乳脂率、タンパク質率、無脂固形分率、体細胞数、乳中尿素態窒素、βカロテン・ビタミンEの含有量) 結果 本年は原発の放射能汚染の影響で当初計画した通りの放牧が実施できなかったため、過去2年間の放牧調査と合わせて検討した。 今回調査した複数の項目から、特に春から夏までの放牧が生乳の質の点でも乳牛の健康性にとっても良い影響を与えることが示された。ただし夏以降については気温の上昇等の気象状況と放牧地の牧草の質が悪いことから、多くの項目で牛舎飼いの牛群の方が成績がよい結果となった。 今回の研究ではAWの観点からみると放牧が良い事は明らかであるが、生乳の品質の点では放牧乳と舎飼乳で良い時期と悪い時期があることが示唆された。今後は放牧と舎飼の両方の利点をいかし、夜間放牧等の気象条件を考慮した放牧体系を構築することが必要と考えられる。
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