2011 Fiscal Year Annual Research Report
犬の肥満細胞腫におけるc-kit変異解析とイマチニブ耐性を起こす二次変異の研究
Project/Area Number |
23925032
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Research Institution | 日本小動物がんセンター |
Principal Investigator |
中野 優子 日本小動物がんセンター, 獣医師
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Keywords | 犬の肥満細胞腫 / c-KIT変異 / メシル酸イマチニブ |
Research Abstract |
本研究は、犬の肥満細胞腫に対してc-KIT変異様式の解析、メシル酸イマチニブの奏効性およびイマチニブ耐性を引き起こす二次変異について調査することを目的とした。方法は外科切除後の病理組織もしくは細胞診サンプルの一部からゲノムDNAを抽出した。調査対象とするエクソンはc-KITの一次変異が頻発するエクソン8、9、11、そして二次変異の発生が予想されるエクソン13、14、17とした。PCRにてc-KITの特定のエクソン領域を増幅し、PCR産物のダイレクト・シーケンシングを行った。 研究成果 1.犬の肥満細胞腫におけるc-KIT変異解析は26例にて実施した。c-KIT変異は13例(50.0%)で確認された。変異の内訳はエクソン11のITD変異は8例、エクソン8のITD変異は2例、エクソン11の欠損変異は2例(c.1663-1671delおよびc.1666-1671del)、エクソン11の点変異(c.1676T>A)が1例であった。エクソン11の欠損変異(c.1663-1671del)およびエクソン11の点変異(c.1676T>A)はいずれも既報にて報告されていない変異であった。 2.26例のうちメシル酸イマチニブ±プレドニゾロンにて治療された犬は22例で、c-KIT変異ありが11例、c-KIT変異なしが11例であった。c-KIT変異が認められた犬のメシル酸イマチニブ±プレドニゾロンの奏効率は100%(11/11)、c-KIT変異が認められなかった犬の奏効率は27.3%(3/11)であった。メシル酸イマチニブへの感受性が認められた14例の奏効期間の中央値は134日(14-855日)であった。また、部分奏効群(n=3)の奏効期間の中央値は22日、完全奏効群(n=11)の奏効期間の中央値は188日となり、両群の奏効期間に有意差が認められた(p=0.0060)。 3.本研究にて新規変異として確認されたエクソン11の欠損変異(c.1663-1671del)およびエクソン11の点変異(c.1676T>A)はメシル酸イマチニブに感受性であり、これらの変異は機能獲得型変異であることが示唆された。 4.c-KIT変異を有し、メシル酸イマチニブに感受性のあった4症例でイマチニブ耐性後の二次変異の検索を実施したところ、1例でエクソン14に点変異(T699I)が確認された。この変異はヒトのGISTにおけるイマチニブ耐性で報告されている点変異(T670I)と同様と考えられた。
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