2011 Fiscal Year Annual Research Report
長期経腸栄養療法モデルラットを用いた薬物消化管吸収能の変動に関する検討
Project/Area Number |
23926009
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
東 敬一朗 金沢大学, 附属病院, 薬剤主任
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Keywords | 経腸栄養療法 / 薬物動態変動 / ジゴキシン |
Research Abstract |
本研究は,長期間の経腸栄養療法が身体に及ぼす影響,それによって薬物動態が受ける影響を明らかにすることを目的として実施した. 6週齢の雄性SDラットに半消化態栄養剤,消化態栄養剤,成分栄養剤をそれぞれ与えて4週間飼育し,経腸栄養剤による身体への影響ならびにジゴキシンの薬物動態変動を検討した.経腸栄養剤の長期間投与は,消化管粘膜には器質的な影響を与えなかった.肝組織をOil red 0染色下に観察したところ,脂質を含まない消化態栄養剤を与えた群では脂肪肝になることが明らかとなった.飼育後にジゴキシンを経口投与(0.05mg/kg)して薬物動態を観察したところ,ジゴキシンのAUCは半消化態栄養剤群ではcontrol群にくらべ約50%減少し,消化態栄養剤,成分栄養剤では逆に増加し,特に成分栄養剤群では約4倍に達した.上部消化管でジゴキシンの吸収に関与するトランスポーターの発現を検討したところ,吸収方向に働くと考えられるOatp mRNAの発現はいずれの経腸栄養剤投与群においても減少し,排泄方向に働くP-gpm RNAの発現は増加していた.よって,いずれの経腸栄養剤もジゴキシンの消化管吸収を減少させる可能性が示唆された.ジゴキシンはヒトでは主に腎排泄されるため,腎臓におけるP-gpm RNAの発現を検討したところ,消化態栄養剤,成分栄養剤群ではcontrol群に比べて発現低下を認めた.また,ラットではジゴキシンは肝臓でCyp3a2によって代謝される.Cyp3a2の発現は,同様に消化態栄養剤,成分栄養剤群で有意な発現低下を認めた.これらの変化は半消化態栄養剤群では認められなかった.つまり,経腸栄養剤は,種類によって異なる影響を与えた.本研究は,長期間経腸栄養療法は薬物動態変動因子になり得ることを明らかにし,今後のより効率的な薬物療法の実践を可能にするものであると考えられる.
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Research Products
(2 results)