2011 Fiscal Year Annual Research Report
内皮リパーゼを標的とした新たな脂質異常症治療法の開発-ウサギモデルによる解析
Project/Area Number |
23930026
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
YU Ying 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 研究員
|
Keywords | HDL / 内皮リパーゼ / ウサギ |
Research Abstract |
低HDL血症や高LDL血症といった脂質異常症は、日本人の死因の約3割を占める心筋梗塞や脳梗塞の主因であるため、その克服は急務の課題である。近年、善玉コレステロールとして知られるHDL-コレステロールを上昇させる治療法の開発が注目を集めている。本研究では、HDLを分解する酵素である内皮リパーゼ(EL)に着目し、この酵素の阻害により、HDLを上昇させる新たな治療法の開発を目指し、最適な動物モデルとして、脂質代謝がヒトに類似したウサギを用いて検討を行った。我々の先行研究により同定されたウサギELのmRNA配列をもとにアンチセンスプローブを作製し、in situ hybridizationによって、EL発現細胞の同定を試みた。その結果、毛細血管内皮細胞のほかに、肝細胞と腎臓の尿細管上皮細胞にもELの発現が検出された。さらに、動脈硬化モデルウサギより動脈硬化病変を採取し、病変内のEL発現を検討した結果、正常血管では内皮細胞にEL mRNAがわずかに検出されたのに対して、動脈硬化病変では、病変に集簇した多くのマクロファージと、血管平滑筋細胞の一部でEL mRNAが検出された。ウサギEL発現を特異的に阻害しうるアンチセンス化合物を正常ウサギならびに脂質異常症モデルのWHHLウサギに投与し、その治療効果を検討したところ、正常ウサギでは、血中のHDL-コレステロール濃度の増加は軽度であったが、HDLのサブフラクション解析の結果、粒子径の大きなHDLでコレステロール含量が増加し、粒子径の小さなHDLではリン脂質含量が増加していた。高脂血症モデルのWHHLウサギは著明な低HDL血症を示すが、ELアンチセンス化合物投与により、HDLのサブフラクションの大半で、コレステロールとリン脂質含量が増加傾向にあった。これらの結果から、EL発現の阻害療法が、脂質異常症(低HDL血症)を改善させる可能性が示唆された。
|
Research Products
(2 results)