2011 Fiscal Year Annual Research Report
FOXL2の遺伝子多型とトラニラストの効果に関する検討
Project/Area Number |
23932005
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
田實 裕介 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 薬剤師
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Keywords | FOXL2 / トラニラスト / ケロイド |
Research Abstract |
ケロイド・肥厚性瘢痕は、外傷や手術などが原因で、皮膚組織が線維増殖性に大きく盛り上がる病変で、痛みやかゆみなどを伴い治療中の患者のQOLを著しく低下させる。ケロイド・肥厚性瘢痕にはTGF-β遊離阻害作用を有し、内服薬としては唯一適応があるトラニラスト(リザベン[○!R])が用いられる。 近年、3番染色体上のFOXL2遺伝子を含む4つの領域のSNPsがケロイドの発症と関連することが報告されたが、FOXL2はTGF-βによって活性化されるシグナル経路の下流分子smadと相互作用することが報告されている。このため、TGF-βの遊離の有無にかかわらず、FOXL2遺伝子によりTGF-β下流のシグナルが活性化される可能性があり、FOXL2のSNPsがトラニラストの効果に影響を及ぼす可能性がある。しかしながら、これまでにトラニラストの効果がFOXL2遺伝子多型に関する報告はない。そこで、本研究では、FOXL2遺伝子多型がトラニラストの効果に及ぼす影響について検討を行い、個別化投与設計への応用を考えることを目的とする。 前段階の実験として、FOXL2遺伝子がトラニラストの効果に及ぼす影響について調べた。ヒトケロイド由来線維芽細胞CRL-1762にリポフェクタミン2000を用いて、GFP遺伝子を標的とするsiRNAもしくはFOXL2を標的とするsiRNAをトランスフェクトした。SiRNAトランスフェクト2日後にトラニラスト(最終濃度100、200、300、400、500μM)を処理し、MTTアッセイを行った。その結果、トラニラストの最終濃度が300μMより高濃度において、GFPsiRNAトランスフェクト細胞に比較してFOXL2siRNAトランスフェクト細胞では、トラニラストに対する感受性が有意に低下した。 以上の結果より、ケロイド由来線維芽細胞におけるFOXL2遺伝子はトラニラストの効果を正に制御することが示唆された。 今後は患者のFOXL2遺伝子の遺伝子多型によりトラニラストの臨床効果に及ぼす影響を調べることにより、ケロイド・肥厚性療痕治療に対するトラニラストの個別化投与設計が期待できる。
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