Research Abstract |
薬剤耐性菌の保有と摂食嚥下機能障害は,高齢者の誤嚥性肺炎の重大なリスク因子になりえる。そこで,この二因子に着目し,誤嚥性肺炎高リスク群のスクリーニング法について検討した。耐性菌の有無と摂食嚥下機能障害の有無で,入院中の要介護高齢者を4群に分類した。A群(耐性菌+,嚥下障害+)は6人,B群(耐性菌+,嚥下障害-)は14人,C群(耐性菌-,嚥下障害+)は15人,D群(耐性菌-,嚥下障害-)は45人であった。各群の誤嚥性肺炎発症率は,6/6,3/14,5/15,3/45で,A>C>B>Dであった。なお,A群の6人は慢性的に肺炎を繰り返していた。 歯科衛生士による1回/週の専門的口腔ケアを実施した場合,C群の肺炎患者1人とD群の肺炎患者3人の発熱日数が減少し,CRP値と白血球像が健常域へと改善した。AおよびB群では全ての検査項目で変化はなかった。A,BそしてC群の患者に専門的口腔ケアを3回/週に強化して実施すると,AとB群の肺炎患者全てで,数種あるいは全ての薬剤耐性菌が検出されなくなった。また,A群の肺炎患者6人中2人,B群の肺炎患者3人中1人,C群の肺炎患者5人中2人の発熱日数が減少し,これらの患者のCRP値と白血球像が健常値へ改善した。 A群とC群の患者の中で,専門的口腔ケアを強化して行っても,発熱日数や各検査結果が改善しない患者(A群:4人,C群:4人)に対し,摂食嚥下機能訓練を実施すると,A群の1人、C群の2人で発熱日数が減少し,これらの患者のCRP値および白血球像が健常域へと改善した。A群は肺炎の発症率,発熱日数,そして低栄養のリスクが統計的に有意に高いという結果であった。その他の項目においては各群間で統計的に有意な差はなかった。 薬剤耐性菌と摂食嚥下機能障害は誤嚥性肺炎のリスクの指標となることが示唆された。また,3回/週の専門的口腔ケアと摂食嚥下機能訓練は誤嚥性肺炎のリスクを軽減する手段となる可能性が示唆された。
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