2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23933016
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
平良 文亨 長崎大学, 医歯薬学総合研究科, 社会人大学院生
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Keywords | トレーサー / ^<137>Cs / 底質 |
Research Abstract |
昨今、放射性核種をトレーサーとした大気・海洋分野の輸送メカニズムの把握が注目されていることから、過去の大気圏内核実験等に由来する人工放射性核種の^<137>Csを指標に、超閉鎖性水域である長崎県大村湾の湾奥部に位置する津水湾における放射性核種の濃度分布、水質項目との関連性の解析及び湾内輸送メカニズムの解明のための基礎データを収集した。 まず、2003年に採取した底質(10地点×4期)の核種分析を実施した結果、^<137>Csの濃度は1.7±0.5~7.2±1.4Bq/kg乾土であったが、主要流入河川が複数流れ込む河口域に比べて、湾央部で高い分布傾向であった。この^<137>Csの濃度と底質のCOD(採取時測定、以下同様)、T-P、T-N及び硫化物との相関は認められなかったが、強熱減量とは弱い相関が認められた(R^2=0.4892)。次に、2011年に採取した底質(4~6地点×3期)の核種分析を実施した結果、^<137>Csの濃度は2.2±0.2~4.5±0.3Bq/kg乾土であったが、この期間は湾央・部を対象としていたため、濃度のばらつきは少なかった。また、この^<137>Cs濃度と底質の溶存酸素量との相関は認められなかった。なお、^<137>Cs以外の人工放射性核種は検出限界以下で、いずれの年も^<137>Cs濃度の季節変動はなかった。 今回の結果から、津水湾の底質は主要河川からの土砂等が流入し、その後湾奥部に堆積することが示唆された。津水湾の底質は、泥分の割合が高いシルト質であるが、細粒分が多い底質は、強熱減量(有機物含有量)の値が高く、酸化還元電位が低い嫌気的環境にあった。つまり、^<137>Csは底質から溶出しやすい環境であるにも関わらず、海水中の^<137>Csはほとんど検出限界以下であったことから、^<137>Csのシルト質への強い吸着性が示唆され、^<137>Csをトレーサーとした底質の環境動態の把握は、極めて有用な手段であると考えられる。さらに、^<137>Csと強熱減量との相関関係から、^<137>Csは底質を介して有機物との結合態で存在していることが推察されるが、さらなる検討が必要である。
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Research Products
(3 results)