2023 Fiscal Year Annual Research Report
Resilience of bridge networks considering the escalation of natural disasters due to global warming
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23H00217
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
秋山 充良 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00302191)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 朋人 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10554959)
本田 利器 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (60301248)
松崎 裕 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 准教授 (10506504)
石橋 寛樹 日本大学, 工学部, 助教 (80843979)
高橋 良和 京都大学, 工学研究科, 教授 (10283623)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 気候変動 / 海面上昇 / 津波 / リスク / レジリエンス / 保険 / 不確定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,地球温暖化による荷重・作用の激甚化のうち,特に,海面上昇による津波ハザード強度の増加,異常降雨による河川内橋梁への流体力と洗掘深の増加,および気温と二酸化炭素濃度の上昇による材料劣化の促進,を想定する.2023年度は,このうち,海面上昇と津波ハザードの影響を受ける沿岸域に住む人々を対象に,そのリスクと,そのリスクを緩和するための津波保険について検討を行った.得られた主な知見を以下に示す. (1) 非定常な海面上昇(NS-SLR)津波イベントの数,対応する津波到着時間に関連する不確実性を体系的に考慮するための確率シミュレーションアプローチを開発した.さらに,提案された確率シミュレーションアプローチは,サンプル平均近似(SAA)を利用し,保険者の期待利益を最大化しつつ,コスト制約のある普及率を満たす最適な保険料率を決定できる. (2) 分析された自治体での最適な保険料率,期待利益,およびそれに伴う破産確率を算定した.期待利益は,影響を受ける建物の数,ハザード強度,保険料率,津波発生プロセスのモデル化などに依存する. (3) NS-SLRは津波に関連するリスクを悪化させ,期待利益の減少を招くため,期待利益の削減を最小限に抑えるために最適な保険料率の増加が必要となる.NS-SLRの影響は津波保険ポートフォリオの評価に考慮されなければならない. (4) 購入決定モデルは,保険者の利益と保険料率に大きく影響する.保険の需要が増加することで,自治体全体で期待利益と最適保険料率が増加する.また,非ポアソンプロセスでは,ポアソンプロセスに比べて,最適保険料率と破産確率がかなり高くなり,期待利益が低くなる.さらに,NS-SLRの影響は非ポアソンプロセスでより顕著となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度には,業績に示した箇所以外にも,以下に関する取り組みを行い,既に当該分野のトップジャーナルに投稿することができている. (1) 気候変動による大雨の頻度・強度の非定常性を考慮した地滑り危険性の定量化; (2) 気候変動による大雨の頻度・強度が河川内橋梁の損壊可能性に及ぼす影響の定量化; (3) 気候変動による大雨の頻度・強度の非定常性に対する河川盛土構造物の信頼性設計法の構築; (4)気候変動による大雨による橋梁損壊と地すべりの同時発生確率の定量化; (5)気候変動による大雨による橋梁損壊と地すべりの影響を受ける道路ネットワークの接続性とレジリエンス評価. これらは,いずれも2024年度以降の検討を進める際の基礎技術であり,これらを活用することで,当初に予定した通りの成果を確実に得ることができると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は,特に,河川構造物の設計法について検討したい.河川の洪水は全世界的にますます頻繁に発生しており,インフラシステムやコミュニティに重大なリスクをもたらしている.降雨の強度と頻度の増加に関連する気候変動の影響がエスカレートする中,非定常な気候変動の影響を考慮した既存の設計方法論を改善し,信頼性を目標レベル以上に保ち,将来の洪水災害を軽減するための方策を提示したい.
特に,非定常気候変動の影響を受ける極端な降雨に対する河川堤防のための新しいLRFD(Load and Resistance Factor Design:荷重と抵抗係数設計)アプローチをしたいと考えている.このアプローチは,気候変動の影響を考慮するための追加の部分係数を導入する.降水量と気温の予測は,複数の排出シナリオのケースを考慮して,さまざまな気候モデルから収集できる.分析対象の河川に対する統合水文・水理モデリングを実施し,関連する時変河川流量と水面高を推定する.最大洪水レベルに関連する非定常極値は,ピークオーバースレッショルドアプローチを使用することで評価可能と考えている.堤防の信頼性とそれに対応する最も破壊可能性の高い点は,越流および斜面崩壊に関連する限界状態を使用して評価する.推定および目標信頼性指数に基づいて,気候変動の影響がある場合とない場合を考慮し,各確率変数の設計点が評価される.最終的に,気候変動の影響に関連する部分係数が決定できると考えている.
具体例として,提案する枠組みを日本国内の幾つかの河川に適用したい.
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Research Products
(17 results)