2023 Fiscal Year Annual Research Report
クライオ電子顕微鏡による多様な材料分析を可能とする有機溶媒急速凍結法の確立
Project/Area Number |
23H05219
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
海原 大輔 東北大学, 多元物質科学研究所, 技術一般職員
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | クライオ電子顕微鏡 / 有機溶媒 / トモグラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、クライオ電子顕微鏡による多様な有機溶媒試料の観察を目指し、凍結グリッド作製およびクライオ電子顕微鏡観察の検討を行った。 試料として、種々の有機溶媒(トルエン、メタノール、エタノール等)を用いた。カーボン支持膜上に規則的に多数の孔が空いたグリッド(Quantifoil膜穴グリッド)、または、修飾セルロース支持膜から成るレース状グリッドに試料溶液を展開し、試料凍結装置(EM GP2, Leica)を用いて、凍結条件の検討を行った。得られた凍結グリッドは、クライオ電子顕微鏡(CRYO ARM 300 II, JEOL)へ装填し、電子直接検出カメラ(K3, AMETEK Gatan)を用いて、有機溶媒凍結膜の形成効率とその状態について観察・評価を行った。 Quantifoil膜穴グリッドを用い、試料凍結を検討したところ、凍結膜の形成は低効率であり、再現性も乏しかった。一方、レース状グリッドを用いると、高効率かつ再現良く凍結膜が形成されることが分かった。凍結膜の形成効率は、有機溶媒と支持膜の親和性、支持膜上に空いた孔の大きさ・形状に大きく左右されることが示唆された。 液体エタンを寒剤として用いた場合、検討に用いた殆どの有機溶媒において、凍結膜の形成・維持は困難であった。これは、凍結膜が液体エタンに溶解するためと考えられた。そこで、液体窒素を用いて試料凍結を試みたところ、凍結可能な条件を見出すことが出来た。 金ナノ粒子を分散したメタノールの凍結グリッドを作製し、トモグラフィー観察の検討も行った。得られた傾斜シリーズについて、三次元再構成を行い、粒子間距離や凍結膜厚等を評価可能であることを示すことが出来た。 本研究成果によって、従来観察困難であった樹脂、油脂、塗料・インク等、広範な液体材料のクライオ電子顕微鏡による観察が可能となり、材料研究の飛躍が期待される。
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