2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23H05239
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Research Institution | Kyoto City Zoo |
Principal Investigator |
中川 大輔 京都市動物園, 種の保存展示課, 獣医師
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 飼育下ゾウ / 発情期推定 / 発情同期化 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物園のアジアゾウ繁殖例は少ない。発情周期が約100日と長いこと、発情期しか雌雄同居できないこと、発情兆候が分かりにくいこと、等の理由がある。本研究ではホルモン剤による定時排卵誘導(発情同期化)を計画した。しかし、発情期推定の知見蓄積により、人為的なホルモン処置が現状必須ではないと考えられたため、今後ホルモン処置が必要な場合に備え、アジアゾウ雌1頭の血中ホルモン動態と外観や行動の変化を調べた。まずプロゲステロン(P4)を酵素抗体法(EIA)及び質量分析法(LCMS)で測定した。両者は一部異なる挙動を示したが、その他は同様の動態を示した。またEIAでは値がLCMSの約10倍となり、P4以外のゲスターゲンも捉えている可能性が示唆された。続いてP4と他のゲスターゲンとして5α-ジヒドロプロゲステロン(5α-DHP)及びアロプレグネノロン(5α-P-3- OH)を比較した。結果として、3者は同様の動態を示した。ゾウの発情期はP4から推定しているが、5α-DHP及び5α-P-3-OHも利用できると考えられた。次にP4と陰部外観変化(陰部チェック:腫脹や色等をスコア化)を比較した。結果として、排卵推定日の14日前にピークを得た。陰部変化はエストロゲン上昇によると考えられ、排卵推定日を考えると早すぎる。チェック項目に問題があるかもしれない。最後にP4とマウント回数を比較した。マウントは雄が前肢を雌の臀部に乗せ、雌が許容する行動である。結果として、マウントは排卵推定日の8日前に始まり、その4日後にピークを迎えた。マウントは発情期の行動であり、P4上昇から推定した排卵日は確かだろう。 陰部チェックは、採血に比べ、非侵襲的で毎日実施できる点が優れている。今回マウント開始より先にピークが得られたため、陰部チェックは同居開始の指標にできる可能性がある。今後は個体数を増やして、継続して評価していく。
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