2023 Fiscal Year Research-status Report
西洋近代観念説の自然主義的論理の形成過程と解体過程についての研究
Project/Area Number |
23K00029
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
冨田 恭彦 京都大学, 人間・環境学研究科, 名誉教授 (30155569)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | デカルト / 観念 / 粒子仮説 / 基礎づけ主義 / カント / ロック |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、デカルトが公刊を断念した『世界論』の彼の論理が、それに代えて出版した一連の第一哲学に関する著作の議論の中でどのような役割を果たしているかを再検討した。重要なのは、デカルトの「観念」という概念の基盤となった「二重存在」的視点──私たちに直接知覚される物や事実に対して直接知覚されない物や事実をその背後に仮説的に想定する視点──である。デカルトは真空も最小粒子も認めず、その意味で原子論者ではなかったものの、彼が基礎づけ主義的営みにおいて使用した観念説の枠組みは、「原子論」もしくは「粒子仮説」に近い仮説的思考をその基盤としていた。つまり、基礎づけ主義的第一哲学の基本的枠組みを構成するのに彼が使用した「観念」は、仮説的・蓋然的・歴史的・創造的思考の産物だった。本年度はこの点を特に『世界論』、『方法序説』、『省察』、『哲学の原理』を取り上げて再考した。とりわけ、デカルトの基礎づけ主義的見解と彼の隠れ自然主義的見解との関係がどのようなものになっていたか──フッサールが言うように「デカルト的第一哲学に自然科学が入り込んでいてもそれは単なる不純物であって、それを排除すればデカルト的第一哲学は確立されるはずだ」と言えるかどうか──が考察の重要な対象となった。 本年度はそれと並行して、「物自体」、「触発」、「表象」ないし「現象」からなるカントの『純粋理性批判』の二重構造が、「物そのもの」、「触発」、「観念」ないし「現象」からなるロックの二重構造を経由して、上記のデカルトの論理とどのように関わっていた可能性があったかを、予備的に考察した。(カントの二重構造は、デカルト的・ロック的二重構造の、概念と原理のアプリオリ化を目的とした改変の一つの形であると思われる。) また本年度は、オックスフォード大学が刊行するある専門誌の依頼により、ロックの宗教論に関する研究書の書評の準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
デカルトの再検討については当初の計画の線に沿って進めることができた。今年度はそれと並行して、さらに、のちのカントからロックやボイルを経てデカルトへとつながる観念説的・表象説的論理について、考察を進めることができた。そのため、「当初の計画以上に進展している」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、本研究は当初の計画に沿って順調に進んでいる。令和6年度は、ロックの観念説についてさらに研究を進める予定であるが、すでに彼に先立つデカルト(とボイル)の見解、彼のあとに出てくるカントの表象説の基本的枠組みについて、今年度中に相応の知見と見通しが得られているため、今後もなお当初の計画に従って、最終的な目的を達成するよう努める所存である。
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Causes of Carryover |
国際専門誌のオープン・アクセスのための費用として本年度に計上していたものが、審査の遅延により年度内に執行されなかった。これについては、審査の結果を待って、次年度(もしくはそれ以降)に執行する予定である。次年度のそれ以外の使用予定額については、当初の予定通り執行することとする。
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