2023 Fiscal Year Research-status Report
the development of the "topological" thinking in the philosophy of Kyoto school
Project/Area Number |
23K00031
|
Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
秋富 克哉 京都工芸繊維大学, 基盤科学系, 教授 (80263169)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 西田幾多郎 / 京都学派 / 場所 / 田辺元 / 西谷啓治 |
Outline of Annual Research Achievements |
西田哲学の「場所」の思想の立場と展開、さらに西田思想そのものの継承の中での展開を、その系譜上の思想家に即して明らかにすることが研究の目的である。 初年度は、まず西田哲学そのもののテクスト読解と西谷啓治の思想的展開の研究に重点を置いた。特に後者について、『宗教とは何か』における「歴史」思想を扱った論考「「歴史」をめぐる西谷とハイデッガーとの対決の一断面」を、東北大学哲学研究会の年報『思索』第56号に、また後年の論考「空と即」の内実を検討した論考「詩的言語の形象とロゴス ー 後期西谷と後期ハイデッガー」を日独文化研究所年報『文明と哲学』第16号に、それぞれ発表した。 従来の自分にとって最も課題となる田辺哲学については、テクスト読解が思ったほど進められなかったことが反省材料であるが、西田哲学と田辺哲学という主題についての代表的な先行研究者である嶺秀樹氏の『絶対無の思索へ ー コンテクストの中の西田・田辺哲学』の書評を実存思想協会編『実存思想論集』39号に向けて執筆できたのは、研究の推進力となった。また、同じく書評として、太田裕信氏の著書『西田哲学の行為の哲学』の書評を宗教哲学会編『宗教哲学研究』41号に向けて執筆したことは、西田哲学の行為概念を再検討する機会となった。 もう一つの大きな成果は、11月にドイツのテュービンゲンとデュッセルドルフで行われた日独国際コロキウムに参加し、研究報告を行ったことである。コロキウムの趣旨とテーマ「仏教とキリスト教における「自然」概念」から、「芭蕉における自然」という表題で発表を行った。発表自体は、本科件の研究テーマに直結するものではないが、発表原稿を準備する段階で、西谷啓治の芭蕉論に立ち入ることができ、非常に有益であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、これまで読み進めてきた西田哲学を改めて再読・再検討することが第一の目標であり、そのことと並行して、田辺哲学と西谷哲学の読解をできるかぎり推し進めることが課題であった。 第一の目標は、もちろん欲を言えばきりがないが、ある程度集中して進められたと思うし、西谷哲学への取り組みも、かなり進めることができた。それに対して、田辺哲学については、西田と西谷に対してどうしても後回しになるような流れになって、十分に推し進められたとは言い難い。 とはいえ、上記「研究実績の概要」の欄に記したように、嶺秀樹氏の『絶対無の思索へ ー コンテクストの中の西田・田辺哲学』の書評に取り組み、その際に同じく氏の前著『西田哲学と田辺哲学の対決 ー 場所の論理と弁証法』をも熟読し、これら二著から、西田哲学と田辺哲学の対決の大きな方向性を学ぶことができたのは、非常に有益であったと思う。そのことによって、西田哲学と田辺哲学の突き合わせという主題が含む問題性がさらに確認でき、自分の研究の独自性を出しうる方向性も明らかにできた。 これらのことから、全体の評価を「おおむね順調」と判断した次第である。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究において少し不十分だったと思われる田辺哲学について積極的な読解を推し進めること、およびこれまで名前を挙げた3名以外に、研究計画に名前を挙げている思想家、すなわち山内得立、務台理作、高山岩男、上田閑照のテクスト読解を進めることが課題である。 田辺哲学については、西田批判をもとに「種の論理」の展開を追っていくこと、およびそれに呼応する西田のテクストを読み進めることである。 また、後者の課題については全て一挙にということはできないので、前半は山内得立の『ロゴスとレンマ』、後半は高山岩男の『場所的論理と呼応の原理』に取り組みたい。
|