2023 Fiscal Year Research-status Report
Transborder Humanityの研究:旅をする「からゆきさん」の音楽を中心に
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23K00137
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
宍倉 正也 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 研究員 (90781766)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | Transborder Humanity |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年度となる研究は、順調に進捗したと言えるだろう。まず、7月にアフリカのガーナで開催された国際伝統音楽評議会の国際大会に参加し、発表を行なった。その後、8月には日本の国立国会図書館で文献資料の調査研究を行った。2024年度になり、1月末から2月にかけて、多くの場所で現地調査を行うことができた。まず、香港を訪問し、からゆきさんが眠る現地の日本人墓地を訪問できた。また、香港の日本人会を訪問し、そこでもう絶版となってしまった資料を運良く取得することができた。また、戦前香港日本人会の様子などもお聞ききすることができた。香港では以前からゆきさんの娼館があった場所なども資料に残っているため、その地域を訪れ、当時を偲んだ。その後、日本の福岡、熊本で現地調査、文献調査を行った。熊本ではコロナの影響で数年訪問することができなかった情報提供者に会うことができ、その方のご好意により大変貴重な資料を預からせてもらうこととなった。その後、オーストラリアのシドニーとキャンベラで、一週間ほどの予備調査をおこなった。キャンベラの国会図書館には予想以上の文献資料が残されており、今後のオーストラリアで行うフィールドワークの大きな見通しを立てることができた。また、その後台南市にある台南国立芸術大学で民族音楽学研究所所長を務めるMade Mantle Hood教授を訪問し、現地の民族音楽学プログラムを視察することもできた。Hood教授は音楽とオントロジーに関する第一人者で、本研究を行う上での理論的な考察について有用な意見交換を多く交わすことができた。当然のことながら、本研究は本研究者が過去から行なってきた研究課題を発展させてきたものである。その長期にわたる研究活動の集大成の一つとして、昨年度の7月にシンガポール国立大学出版から編著が出版されたことは、大きな研究実績と言えるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進捗状況としては「おおむね順調に進展している」と言えるだろう。上にも書いたが、昨年度は活動的な一年を過ごすことができた。特にオーストラリアでの予備調査は、今後の研究を発展させていく上で、大いに役に立つもので、オーストリアの木曜島、ケアンズ、ブルーム、そして西オーストラリア州の多くの場所で現地調査を行いたいと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策であるが、東京工業大学での所属が来年度以降できないとの連絡を受けた。本年度2月中から新たな所属先、科研費研究員を受入れ可能な研究期間を探している。無給の研究員での所属で、科研費を取り扱ってくれるだけで構わないのだが、それでも新たな所属先探しは難航している。今後は、来年以降所属がなくなる(つまり科研費受給ができなくなる)ことも踏まえ、本研究を本年度中にできるだけ進捗させたいと考えている。とは言っても、時間的、身体的な制約もあるので、できることは限られてくると思う。6、7月に行われる地域学会、そして来年1月に行われる国際伝統音楽評議会の国際大会への参加はもちろんだが、機会を見つけて、現地調査をできるだけ行いたい。本研究での調査対象地域にインドのムンバイ、アフリカのザンジバルが含まれている。来年度以降の訪問を予定していたが、できれば2025年2月あたりに、どちらかには訪問したいと思っている。
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Causes of Carryover |
東京工業大学の方から、来年度の所属の継続ができない旨を連絡され、新しい所属先を探すように求められた。もちろん、今後も予定通り科研費を受給し、研究を推進していきたいが、すでにいくつかの研究機関から所属の申し入れを断られており、今後の見通しも難しい状況だと言わざるを得ない。そのため、次年度以降の所属がなくなる(つまり科研費受給ができなくなる)ことを鑑み、次年度以降の研究費を本年度予算にあらかじめ取り込み、できるだけ本研究を進捗させておきたいと思う。次年度以降の受け入れ先が見つかった場合には、予算配分を見直し、来年度以降に予算を残す形で、研究計画を本来の形に近づくように修正したい。
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