2023 Fiscal Year Research-status Report
Research on Archiving and Sharing Conservation Documentation of Artworks
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23K00222
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
本間 友 慶應義塾大学, ミュージアム・コモンズ(三田), 講師 (00650003)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 修復ドキュメンテーション / 修理・修復記録 / アーカイヴ / 研究データ / オープンデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である2023年度は、修復ドキュメンテーションの作成・保管・利用状況の調査、作成者・保管者らへのヒアリング等を通じて、修復ドキュメンテーションの特徴を明らかにすることを主眼として研究を推進した。研究計画に従い「① 修復ドキュメンテーションの現状把握に向けた予備調査」「②国内の文化機関における現状調査」を進めるとともに、「③修復活動の共有」にも取り組んだ。 ①の予備調査では、修復ドキュメンテーションをめぐる実践、課題と論点について国内外の修復ドキュメンテーションに関する文献調査を行った。また、実務家や作家へのヒアリングを通じて、現状調査を行う対象について検討し、調査項目のドラフトを作成した。 本作業を通じて、メディア・アートやアート・プロジェクトなど、作品の物理的な形態が無い/曖昧な領域におけるドキュメンテーションの蓄積とその共有化を巡る取り組みが、修復の領域でも重要な参照項となることが改めて確認されたことから、現代美術を専門とする文化機関をヒアリングや現状調査の対象に追加した。 ②の現状調査としては、①の作業を踏まえ、山口情報芸術センター(YCAM)で調査を行い、アーカイヴ/ドキュメンテーション担当者にヒアリングを行った。この活動を通じて、集団によるソフトウェア開発の手法が、作品の各段階の状態を記録していく手法としても参照可能であること、作品の周縁を形成するモノや情報を、どこまで修復ドキュメンテーションに含めるか等について、大きな示唆を得た。 また、作成されたドキュメンテーションを現実にアクセス・活用可能なものとするためには、作品をめぐるコミュニティ形成が重要な役割を果たすことが認識された。 ③修復活動の共有としては、所属機関で進行する修復事業(担当者:松谷芙美[研究者番号 30847760])について、大学ウェブサイトからの情報発信を実現すべく、大学広報室に働きかけを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由①の予備調査については概ね計画通り進捗した。②の国内の文化機関における現状調査については活動目標に達しなかった。要因としては、本年度からコロナ禍において抑制されていた活動が一気に再開したため、研究代表者も含め実務担当者の業務負荷が高まり、現地調査にまで至らなかったことがあげられる。 当初計画で本年実施予定だった文化政策の動向に関するヒアリング調査については、政策を巡る議論の進展を鑑みて、2024年に入ってから行うことがより充実した成果に繋がると判断し、実施時期を変更した。 また、初年度は、文献調査、予備調査を中心とした活動となったため、論文、学会等での発表を行うことができなかった。次年度には、積極的な途中成果の公開を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、① 国内の文化機関・修復実務機関における現状調査 ② 研究データのオープン化を巡る研究と実践の調査 ③ 海外における 事例調査 を軸に研究を進める。 ① については、予備調査の結果に基づいて、国内の文化機関における現状調査を着実に進めるとともに、文化政策の動向に関するヒアリングを行う。また、修復の実務を担う修復工房での調査・現物資料の閲覧を行う。 ② については、国内外の文献調査に基づき、研究データのオープン化をめぐる実践と課題について調査を実施する。 ③ については、イギリスへの渡航調査を通じて、国外におけるドキュメンテーション蓄積・共有の状況について調査を行う。
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Causes of Carryover |
現状調査の一部と文化庁へのヒアリングの実施時期を2024年度に変更したため、関係する旅費や謝金を次年度使用額として計上した。2024年度は、イギリスへの渡航調査を予定しているが、急激な円高や現地の物価高を鑑みるに、当初計上した予算ではカバーできない危険性がある。そのため、2023年度、資料整理や反訳作業を研究代表者が行うことにより予算に余地を持たせた。
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