2023 Fiscal Year Research-status Report
Ageing, Time and the Future in Contemporary Fiction
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23K00382
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
迫 桂 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (60548262)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | life course / ageing / time / posthuman / nature / contemporary fiction |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の目的は、「未来」の意味を再考することにより、伝統的な時間観と画一的なライフコース観を見直し、多様な生の在り方に目を向け、ライフコースについての既存の理解を広げることである。本年度は下記の具体的課題に取り組んだ。 Speculative fictionと未来について。①のTVドラマ作品をPosthumanism批評の視点から分析し、ライフコースと未来について考えた。成果を国際学会で発表し、その後論文にまとめ、国際雑誌に投稿をした。②小説作品を分析し、世代間関係と未来の在り方と理解の仕方が密接に関わっていること、さらに、他者との倫理的関係が未来の想像・創造に重要であることを示した。 児童絵本と未来について。①日英の児童絵本における死の表象を比較分析し、(大人がもつ)ライフコースや死についての文化的概念とその文化的差異を考察した。成果は国際学会で発表した。② 児童文学研究、環境批評、エイジング・スタディーズの視点を接合し、庭を舞台に世代間関係を描く児童絵本を分析した。自然とライフコースのステージが様々な連想で結び付けられていること、庭という空間が自然と人間の社会空間の中間に位置づけられ、それゆえに、大人・子供の二分立を超えて老年者と子どもの交流を可能にする空間を提供していることが分かった。結果を国際学術集会で発表し、さらに、論文にまとめた。 新規の共同研究で、ポストコロニアル批評の視点からライフコースと時間について考えた。具体的には、Indian Ocean fictionとして扱われる小説三作品を分析し、記憶・歴史という時間の理解に空間が大きく影響しているかを考えた。 エイジングと空間に関心をもつ研究協力者とオンラインで面会をし、意見・情報交換を行った。学術集会での共同パネル組織に合意した。また、今後の共同研究の可能性についても話し合った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新規の共同研究に参加することになり、新しい分野の文献調査が必要になったため、それに時間がかかり、当初の計画よりやや遅れが出た。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の新規共同研究に参加したために遅れが出たが、このために行った意見・情報交換及び文献調査は本研究課題のその他の計画遂行に有益なものも含まれている。これらの成果を有効に活用することで、課題全体の研究計画の遅れが大きくなることは避けられると考えている。
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Causes of Carryover |
予期しなかった程度の円安と渡航費上昇により、本研究課題の全期間(5年間)を通して考えると、交付額では研究資金が不足することが見込まれた。そのため、所属機関内の研究資金に申請し、本研究課題遂行の支出の一部をそれで賄った。これにより、余剰分が発生した。 次年度の主な使用用途は、国外研究者の招聘、国外出張の費用支出である。円安の影響で費用が増幅する見込みであるため、本年度の余剰分をこれらの支出にあてる。
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