2023 Fiscal Year Research-status Report
西洋古典文学における作品の場に関する研究基盤の確立
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23K00424
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
浜本 裕美 九州大学, 言語文化研究院, 准教授 (30737870)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河島 思朗 京都大学, 文学研究科, 准教授 (80734805)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ホメーロス / 古代ギリシア文学 / 合唱抒情詩 / ギリシア悲劇 / 叙事詩 / ウェルギリウス / ラテン文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は西洋古典文学作品と「場」の関連を包括的に検討し、その研究基盤を構築することを目的とする。幅広いジャンルを含む西洋古典作品において、作品とその上演の場、また作品内に表象される場のあり方はさまざまであり、作品と「場」の関連について理解を深めることは、個々の作品理解、またその作品が属するジャンル理解、そしてそれを受容する社会の理解へと通じている。また、個々具体的な作品の理解を通じて、作品と「場」の関連を理解するには、問題設定の柔軟な検討と作品の精緻な読解が欠かせない。 研究の初年度にあたる本年度は、作品と「場」の関連を考察する際に必要な問題設定を検討すると同時に、研究対象となる作品の先行研究を調査、収集し、注釈者及び研究書を参照し精緻な読解を進めた上で、研究成果の一端を公刊した。概ね当初の計画に従って、ギリシア・ローマの叙事詩を中心にしながら、ギリシアの合唱抒情詩や悲劇も視野に含めつつ研究を進めた。 研究代表者の浜本は、特にジャンルの違いを意識しながら作品と「場」の関係について考察を深め、論文を発表した。具体的には、主にホメロス叙事詩で用いられる1つのエピテトン(枕詞)に注目し、叙事詩、ホメロス賛歌、合唱抒情詩や悲劇といった分野を通じての用例と先行研究を精査した。その過程で、当該のエピテトンの新たな解釈を提示するとともに、合唱抒情詩や悲劇というジャンル特有の「場」との結びつきを指摘した。分担者の河島は、叙事詩における場に焦点を当てながら、ギリシアの叙事詩とローマの叙事詩のつながりについて考察した。具体的には、古代ギリシアの叙事詩ホメロス『イリアス』とウェルギリウス『アエネーイス』を研究対象とした。その成果の一端として、『イリアス』についての論文と『アエネーイス』の最新の研究書に関する書評を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように、作品と「場」の関連についてさらなる問題の精緻化を検討しながら、作品研究を進めた。研究対象とする作品の先行研究の調査、収集を行い、合唱抒情詩やギリシア悲劇作品にも触れつつギリシアの叙事詩とローマの叙事詩について、作品理解の深化や読解、解釈に取り組んだ結果、一定の研究成果を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度同様、「場」を論じる際の問題設定を検討しながら、個々の作品研究を進め公刊を目指していく。
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Causes of Carryover |
研究推進に必要な西洋古典学関連書籍の発注、納品が年度末に間に合わなかったため、次年度、購入する。
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