2023 Fiscal Year Research-status Report
Rethinking Musical Thought in Russian Culture during the First Half of the 20th Century: A Focus on the Activities and Thoughts of the Medtner Brothers
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23K00440
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高橋 健一郎 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 准教授 (80364206)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | メトネル / 音楽哲学 / ディオニュソス / ロシア音楽 / ロシア象徴主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度はアメリカ議会図書館の音楽部門において、約一週間にわたりメトネル兄弟の書簡の調査を行い、家族間や音楽家との間に交わされたかなりの数の手紙を実際に閲覧し、複写することができた。これらの書簡の多くは未公刊であり、貴重なデータが含まれている可能性があり、今後詳細に読解し、これからの研究に大いに活かしていきたい。 また、上記の資料の収集と並行して、ニコライ・メトネルの音楽論『ミューズと流行:芸術の基礎の擁護』(1935年)における「ディオニュソス主義」の問題を20世紀初頭のロシア象徴主義の議論を参照しながら論じた論文を1本公刊した。一般に、ニコライ・メトネルは作品においても思想においても芸術の「アポロン主義」を志向していたとされるが、その音楽論にはデュオニュソス主義への志向が見られる箇所がある。その矛盾を、ヴャチェスラフ・イワノフやマリエッタ・シャギニャン、エミリィ・メトネルら思想家、作家、文芸評論家たちの1910年代の論文や書簡を参照しながら読み解いた。ディオニュソス主義は20世紀初頭のロシア文化におけるキーワードの一つだが、その用語の使用は論者によって大きく異なり、ニコライ・メトネルの上記の「矛盾」も当時の文脈を考慮に入れると十分に理解可能であることを示すことができた。このように、20世紀初頭のロシアの芸術論、文化論の一つの大きなテーマに対してわずかながら新しい視点を見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アメリカ議会図書館での調査の収穫が大きかったが、所蔵資料が予想していたよりもはるかに多く、すべてを調査するに至らず、次年度以降継続することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度にもアメリカ議会図書館での調査を予定しており、資料調査を精力的に進めるほか、2023年度の研究で課題としていた理論的な問題の考察を進めていく。
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Causes of Carryover |
生じた次年度使用額は「1万4千円」程度の端数であり、また、次年度の研究において、進行する円安により増大が予想される海外書籍等の支出に回すことでより効果的に研究を進めることができると思われるため。
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Research Products
(3 results)