2023 Fiscal Year Research-status Report
Comparative structural study of Buddhist temples and villages in Medieval Kibi region.
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23K00831
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
苅米 一志 就実大学, 人文科学部, 教授 (60334017)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 中世寺院 / 吉備地方 / 古文書 / 荘園 / 法制 / 村落 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度末に『吉備地方中世古文書集成(4)美作豊楽寺文書』(就実大学吉備地方文化研究所、2023年3月)を刊行しており、全編の編集を行って古文書の写真と翻刻を公開した他、「解説 美作豊楽寺の中世古文書」の執筆を担当している。この成果に基づき、荘園内部の寺院における湯屋・風呂の提供について考察し、あわせて荘鎮守である志呂神社の所蔵古文書を利用して、名主による座の形成や維持についても考察した。さらに温泉と寺社との関係についても考察を進め、全国における「温泉神社」が仏教および僧侶と深い関連性を持ちつつ形成されてきたことを考察している。 ここにおける視角を応用して、さらに岡山県内・外の寺社において調査を進めた。特に美作方面では、岡山市建部町の豊楽寺・志呂神社、久米南町の誕生寺、津山市の奈義山菩提寺・中山神社・高野神社などで境内の踏査・実測などを行っている。他に岡山市の備中吉備津神社、総社市の宝福寺などの所蔵古文書を『岡山県古文書集』を底本として考察し、寺社と世俗との関係を探った。 これと併行して、中世初期における「氏人」概念についても検討しており、寺社における「氏人」の実態について、古代からの継承を意識して研究を進めている。「氏人」はもはや血縁集団ではなく、地縁集団であることは明らかであるが、その結集原理が如何なるものであり、寺社そのものは彼らにとって如何なる意義を有したのかを考察している。「氏人」を古代に遡及させることによって、寺院の形成そのものを古代に遡及させようとする偽文書の存在も確認しており、このことにより、特に寺院と氏人との不可分の関係を推測できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ対策の緩和により自由に調査旅行が可能となり、また学会も盛んに対面形式で開催されるようになったため、意識的・積極的に外部に出て、研究資料を収集し、また第三者の知見を得られるようになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
中世初期における「氏人」概念は重要であり、これが後世の「寺座」「宮座」に継承される道筋を探りたい。9・10世紀における「氏人」の語の意義を確定させるとともに、吉備地方の寺社古文書において、如何なる「座」が存在したのかを探る予定である。
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していた書籍類の多くが次年度に刊行延期となったため。
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