2023 Fiscal Year Research-status Report
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23K00841
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
森 哲也 九州大学, 人文科学研究院, 専門研究員 (50315024)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 観世音寺文書 / 東大寺文書 / 観世音寺 / 東大寺 / 史料学 / 古文書学 / 日本史 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5(2023)年度は、研究課題の年次計画に従い、まず観世音寺文書の註釈的考察の推進に努めた。具体的には、すでに校訂釈文案を作成済みである観世音寺公験案(保安元年成立)を除く観世音寺関係文書を集成し、原本調査の成果、東京大学史料編纂所架蔵の影写本・写真帳等により、従来の刊本に修正を加えた校訂釈文案を作成した(題籤、紙継目、端裏等の情報や、傍注・頭註、伝来過程、参考文献等を付す)。その上で、公験案・関係文書の両者について、読み下し、註釈、解説等を加えた「観世音寺文書註解稿」の作成を進めた。 その過程において、国立公文書館(内閣文庫)所蔵の観世音寺文書を調査し、鮮明な画像データに基づく釈文の整備を行うことができた。神奈川県立金沢文庫における、称名寺聖教『対馬嶋』の原本調査では、その裏書に、観世音寺で行われる授戒をめぐる有智山(竈門山寺)・宇佐宮との関係や、四王寺、安楽寺等、観世音寺周辺の寺社に関する言説を見出すことができ、次年度以降の研究計画を進める上でも新たな手がかりを見出している。京都市歴史資料館における調査でも、これまで大治5(1130)年6月10日の筑後国留守所牒案とされてきた文書が、筑前国留守所牒案であることを確認できた。 また、令和3・4年度に実施した、東京大学史料編纂所一般共同研究「東大寺文書の近世・近代」(代表者:森哲也)の成果をとりまとめて報告書を刊行したが、その中に本研究課題に基づく内容も盛り込むことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
校訂釈文、読み下し、註釈、解説等を備えた「観世音寺文書註解稿」の作成作業を進める中で、特に用語註解と解説の部分において、単なる辞書的な意味のみではなく、次年度以降の課題成果を踏まえる必要のある個所が見出されたことによる。そのため、次年度の成果も盛り込みながら、註解稿の完成を図る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で十分な成果を上げられなかった部分については適宜挽回を図りつつ、当初の年次計画に従い、他の西海道所在寺社(宇佐宮、安楽寺等)の事例も参看しながら、観世音寺と東大寺、大宰府、筑前国をめぐる文書授受の構造、地方における文書保管のあり方について分析を行う。また、それらの成果を踏まえて、観世音寺領荘園の特質解明を進める。
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Causes of Carryover |
データ整理のため雇用する予定であった大学院生の都合が合わず、その分の人件費・謝金を関係図書購入に充てたが次年度使用が生じた。次年度は適宜、人件費・謝金等として使用する予定である。
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