2023 Fiscal Year Research-status Report
Language Populism of German Jews in Palestine, 1933-1948
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23K00897
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
長田 浩彰 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (40228028)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | パレスチナ・ドイツ・ユダヤ人社会 / 言語ポピュリズム / Jedioth Chadashoth / Yedioth Hayom / Orient (Zeitschrift) / Jecke |
Outline of Annual Research Achievements |
周知の通り、定期刊行物等を媒介とした共通の言語領域の形成は、ベネディクト・アンダーソンのいう「想像の共同体」形成の前提条件である。その意味でドイツ語新聞は、バレスチナ・ドイツ・ユダヤ人社会という「想像の共同体」形成の重要な媒体と考え得る。本研究で史料とするJedioth Chadashoth(『最新ニュース』: JC)やYedioth Hayom(『日々のニュース』: YH)は、英字紙やヘブライ語紙のニュースをドイツ語に翻訳して掲載するダイジェスト紙でスタートし、前者は35 年10 月から、後者は36 年12 月から、戦時中の中断を挟みながら日刊で朝夕2 回、テルアビブで発行された。YH は1964 年末に廃刊となるが、JC は1973 年末まで続き、後継紙として、Israel Nachrichten が、2011年までイスラエルでのドイツ語紙として発刊された。これらの記事からは、テルアビブのドイツ・ユダヤ人社会の日常が見えてくる。 初年度は、まずJCの1935年から38年度末の紙面内容の変化を考察の対象とした。当初は、ヨーロッパ情勢を扱う第1面、ドイツを中心に世界のユダヤ人関係の出来事を扱う第2面、そしてパレスチナの状況をまとめる第3面で本紙はスタートした。パレスチナでのアラブ系住民の大規模な反乱が発生する36年4月以降は、現地の状況や委任統治政府・本国英議会、パレスチナ・アラブ人社会代表らの動向が第1面となっていく。加えて紙面内容も充実し、映画や演劇評の文芸欄、スポーツ、連載小説、株式市場動向のほか、ヘブライ語学習面やラジオ番組表も加わった。パレスチナ・ドイツ・ユダヤ人社会の関心が結実した内容と理解できる。 さらに、ハイファとエルサレムで1942年から43年に出された週刊誌Orientに関する、記事分析も開始した。途中経過は、2023年7月の学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果を、後述のように学術雑誌論文として2023年11月に公表し、雑誌Orientに関しても、2023年7月2日、中国四国歴史学地理学協会2023年度大会・ 西洋史学部会(広島大学)で中間報告を行えたから。
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Strategy for Future Research Activity |
Jedioth Chadashoth(『最新ニュース』: JC)やYedioth Hayom(『日々のニュース』: YH)の、1939年以降の記事内容の分析に着手していきたい。また、雑誌Orientの記事内容について、更に分析を進め、40年代前半のパレスチナにおけるドイツ・ユダヤ人社会の状況について分析する。 さらに、ハンブルク大学現代史研究所のオーラル・ヒストリー・アーカイブ「記憶の工房」では、代表者リンデ・アーペルが、ナチ期以降にパレスチナに移住したドイツ・ユダヤ人18人へのインタビューを2010年4月と5月にイスラエルで実施し、ビデオ資料として保有している(http://www.werkstatt-der-erinnerung.de/ jeckes/jeckes)。ヘブライ大学オーラル・ヒストリー部局が所蔵する200件のドイツ・ユダヤ人移住者へのインタビュー・コレクション(https://portal.ehri-project.eu/institutions/il-002784)についても、ガザ侵攻終結の後に、現地状況が安定化すれば、調査・利用していきたい。
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Causes of Carryover |
初年度は、イスラエルのガザ侵攻を受けて、イスラエルへの海外出張を断念した。次年度に、ガザ情勢が安定すれば、出張を計画したい。更に、ドイツの文書館や図書館への出張も計画しているので、合わせて利用したいと考えている。
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