2023 Fiscal Year Research-status Report
A Historical Study on the Debate over Spanish Floridas during the Madisonian Presidency
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23K00901
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
遠藤 寛文 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 総合教育学群, 講師 (30829148)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | アメリカ史 / アメリカ研究 / 辺境 / 19世紀 / 帝国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、18世紀末から19世紀初頭の米西国境地帯に相当する東西フロリダ地方に注目し、これを北米領土をめぐって対立する欧州帝国の支配圏が重なり合う境界域として再措定する。18~19世紀転換期に見られる帝国間境界域の変容と北米秩序の再編過程に注目することを通して、従来支配的であった一国史的な歴史観とは異なる多元的な視点から19世紀の北米史像を示すことが本研究の目的である。 初年度にあたる2023年度は、史料・文献の収集と分析に力を入れ、その一部を投稿論文として発表した。本研究には、東西フロリダ地方のグラスルーツな事実史を究明する作業と、東西フロリダ問題と同時代の米国政治・社会との関係を考察する作業が含まれる。それゆえ、本年度の研究成果もこれに即して二つの異なる性格を帯びることとなった。すなわち、前者の成果が「デュプリーの略奪と西フロリダ共和国」(『防衛大学校紀要』人文科学分冊, 127号)、後者の成果が「マディソンと1812年戦争期のイギリス陰謀論」(『英米文化』54号)である。 本年度の研究を通じて、国家の統制が及ばない辺境の地において、米国準州民による国境を越えた略奪行為を正当化するために人民主権や共和政の原理が悪用されていた事実が明らかとなった。また、辺境各地における「先住民と欧州帝国の結びつき」がなぜ当時のアメリカ主流社会にとって極端に不愉快なものだったのかも、史的経緯を踏まえることである程度明らかとなってきた。今後は新たに入手した史料群の解析を進めるとともに、19世紀初頭という時代性についてさらなる検討を進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、査読論文二点の投稿を進めたことに加えて、史料・文献の収集および分析を重視した。二次文献については、スペイン領ルイジアナ植民地および西フロリダ植民地の統治と実態を論じる諸研究の把握に力を注いだ。海外文書館からの史料請求も実施したが、円安の影響により当初想定していた分量を入手することは叶わなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2023年度に新たに入手した現地史料の解読・分析作業を進める。とりわけ、連邦議会による併合承認法案可決を受けて実施された、米軍によるモービル占領(1813年)をめぐる現地の動向について検証する計画である。 これに加えて、東西フロリダ問題の発端といえるルイジアナ購入期(1803年)の西フロリダ領有権問題をめぐる事実解明を進める必要がある。ルイジアナ購入条約と西フロリダ問題は深く関係しており、そこには当時の米国政権指導部の北米支配権をめぐる見解や対欧州観が色濃く反映されていると考えられることから、実証的な史料解析が必要となる。これと同時に、「ルイジアナ領の喪失」に伴うスペイン当局の見解や西フロリダ現地住民の動向についても考察を深めたい。 これらを総合する形で、ルイジアナ購入期からモービル占領期に至る一連の西フロリダ史を見通す視点を得ることが本研究の当面の課題である。
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Causes of Carryover |
歴史的な為替変動に伴い、計画時点での洋書購入額と調達時点での金額に齟齬が生じたため。次年度使用額は引き続き洋書購入に充てる計画である。
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