2023 Fiscal Year Research-status Report
1890年代-1930年代のオーストリアにおける女性の越境的移動と多層的な売春市場
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23K00913
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Research Institution | Kochi National College of Technology |
Principal Investigator |
江口 布由子 高知工業高等専門学校, ソーシャルデザイン工学科, 教授 (20531619)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | オーストリア史 / 近現代ヨーロッパ史 / セクシュアリティ / 売春 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、越境的な女性の移動という観点から、警察的介入および反人身売買運動などの福祉的介入を手がかりにして、これまで未解明であった1890年代-1930年代のオーストリアにおける人種・階級・ナショナリティの交錯した多層的な売春市場のありようを明らかにすることにある。研究計画書でも確認したように、本テーマに関して研究状況を俯瞰すると、帝政期についてはある程度の蓄積があるが、管見の限りではあるが戦間期については十分とは言いがたい状況であった。本研究を開始してからも文献をさらに調査・収集し内容を確認したが、やはり断片的なエッセイが中心であり、まず実証研究に必要となる史料の所在を確認することが必要だと判断した。 そこで、これまでの調査・研究の成果を2023年12月の第20回ジェンダー史学会の報告としてまとめると同時に、オーストリア国立文書館などの所蔵資料をオンラインで確認し整理し、2024年3月に史料調査旅行を行った。売春や性的人身売買に関する史料群は主に以下の四つ、すなわち①規制や国際協定に関する議会や外交での議論、②警察の取締りおよび刑事裁判の記録、③反人身売買運動や廃娼運動などの関連団体の機関誌や性感染症を中心とする医療専門誌、④いわゆる「イエロー・ジャーナリズム」も含む同時代の新聞・雑誌、に分けられる。本調査旅行ではとくに①について国際連盟内の婦人児童売買諮問委員会に関する外務省史料を、②についてニーダーエステライヒ州警察本部局所蔵の売春取締りに関する史料を収集した。また、このカテゴリとは別に、社会行政省が州警察本部と連携して進める性病対策についての史料(社会行政省作成)も収集することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)史料収集については、概要でも記したように、当初予想していた外務省関連史料や警察関連史料の他にも、社会行政省関連の資料が多く残っていることが判明した。したがってこの点については、現段階、非常に進展したと言える。 (2)成果報告については、当初の目標では学会発表に留まり、論文としての成果を出せていないので、やや遅れていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2023年度の収集資料をもとに、学会発表を行い、確実に論文発表につなげたいと考えている。 また為替相場の影響を受け予算的な課題もあるが、存在は確認しているが、内容についてはまだ調査をしていない史料も多く存在しているため、可能な限り本年度中に調査旅行を行う。 セクシュアリティ史に限らず、医療史や社会福祉史との関連を積極的に探り、書評などを発表するつもりである。
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Causes of Carryover |
為替相場やインフレの影響による2023年度の物品費(とくに書籍)や旅行費の増加を考慮して、400,000円の前倒し請求を行った。結果的に、当初の配分予算より40,000円程度の超過で収まったため、次年度使用額が生じた。 本年度も調査旅行を検討しているが、同様の状況が予想されるため物品費や国内旅行費を圧縮することで、予算内に収めるよう努力する。
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Research Products
(2 results)