2023 Fiscal Year Research-status Report
産業構造の多様性と地域経済のレジリエンスに関する研究
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23K01004
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Research Institution | Shimonoseki City University |
Principal Investigator |
杉浦 勝章 下関市立大学, 経済学部, 教授 (10346760)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 産業構造 / 地域経済 / レジリエンス / 都市雇用圏 / 特化係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、地域経済のレジリエンスに関する先行研究のレビューを中心に研究を遂行した。レジリエンスという概念は多様な学問分野で利用されているため、その定義は論者によって様々である。地域経済の分野に限定してもそうした状況は同様であり、A. Markusenが指摘するようにあいまいな概念のまま利用されていることから、まずはその整理に着手した。 その結果、多くの先行研究ではレジリエンスを、①地域が何らかのショックに耐える能力、②地域が何らかのショックによって受けたダメージから回復する能力、③地域が何らかのショックを受けたときに地域の経済構造を適応させる能力、といういずれかの観点からとらえていることを把握した。このうち③の適応力については、短期的な適応と長期的な適応がそれぞれ存在している。 また、地域経済のレジリエンスを図る尺度についても、議論が収斂しつつあるという主張が近年増加している。例えばJ. Suttonらの主張では、preparation(将来のショックへの準備)、vulnerability(ショックによる影響の受けやすさ)、resistance(ショックに対する抵抗力)、robustness(ショックに適応する能力)、recoverability(ショックからの回復力)という5つの尺度で地域経済のレジリエンスを評価できるとしている。 しかしながら、先行研究におけるこうした主張は一貫したものではなく、依然として論者によって若干の相違が残されている。レジリエンスを議論するにあたって、必ずしも厳密な定義の一致を必要とするわけではないが、少なくとも一定の範囲内で共有できる認識は必要と考えている。 現在は、以上の内容を論文として取りまとめている段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究面では、先行研究のレビューを実施していたが、当初想定していたよりも多岐の内容にかかわることが判明したため、その作業に時間を要した。 個人的な理由としては、所属大学の新学部設置認可申請作業に従事することになったため、そこに時間をとられた。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、昨年度完成させることのできなかった先行研究のレビュー論文を完成させる。続いて、実証作業に用いる地域経済に関する各種データの整理作業に着手する。
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Causes of Carryover |
旅費の利用が想定を下回ったため残額が生じたものの、全体としては概ね予定通りとなっている。引き続き計画に基づいて使用していく。
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