2024 Fiscal Year Research-status Report
訴訟における情報・証拠の収集に関する研究(行政訴訟における方策との比較を通じて)
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23K01179
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| Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
濱崎 録 西南学院大学, 法学部, 教授 (90432773)
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| Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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| Keywords | 行政訴訟における事案解明義務 |
| Outline of Annual Research Achievements |
2024年度の研究実績は、以下に記す業績に加えた公表論文等の形では残すことができなかった。これは、後述の現在までの進捗状況に示す通り、研究計画のなかで当初掲げていた仮の結論に大きな変更の可能性が生じたため、その検証に時間を要していることが大きな原因である。 2025年度は、修正すべき結論の方向性は見えているため、これの検証を早期に行い、研究実績の公表を行う。 なお、その他の業績として、笠井正俊、川嶋四郎ほか『はじめての民事手続法〔第2版〕』(有斐閣、2024年10月)123-154頁、川嶋四郎編著『民事執行・保全法入門』(日本評論社、2024年9月)153-169頁がある。これらの業績執筆に関連する打ち合わせを機として、川嶋四郎教授に下記の研究計画の修正について、相談及び意見交換を行う機会を得た。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究の進捗が遅れているのは、前述の通り、研究を進める中で、研究計画当初に立てた仮説に修正変更すべきことが明らかになったからである。その意味では、研究実績の公表は遅れたものの、誤った結論が修正されたという点で、研究自体は進捗したということもできる。 研究計画変更の端緒は、2023年度後半に研究実績として公表した判例評釈にある。当初の研究計画では、行政訴訟における事案解明義務と民事訴訟におけるそれとを比較し、その共通点や相違点を足掛かりとして、民事訴訟において一般的(あるいは広義の)事案解明義務を肯定できると論証することを仮の結論として研究を進めた。23年度以前の科研費課題の採択において、通常民事訴訟の周辺領域において、民事訴訟法の原則を修正したり、一歩進めたかたちでの主張立証の局面が定められてきた流れを明らかにできており、今回の研究計画はその延長線上にあるものと想定できていた。 しかし、2024年度に考察した判例の検討、及びその後の2024年度を通しての考察により、行政訴訟における事案解明義務は、行政の説明責任に根拠を見出すべきものであることが判明した。そして、これを民事訴訟における事案解明義務と比較した場合、民事訴訟におけるそれは、あくまで行政訴訟の説明責任と同様に、あるいは行政の説明責任と同程度の協力を、民事訴訟における当事者に課すべき場合にのみ生じるという視点が、従前の(一部の)学説に欠如していた可能性が明らかになった。そのため、行政訴訟における事案解明義務が民事訴訟においてもおおむね同様に適用可能であるような前提で議論が展開されたのではないかという、修正すべき仮説をあらたに設定し、その検証に2024年度を費やすこととなった。
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| Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、前述の通り、当初の研究計画で掲げていた仮説に修正の可能性があることが明らかになったため、結果的に研究実績を予定通り公表できなかった。そのため、2025年度は、すでに取り掛かっているこの修正仮説の検証をできる限り早期に完成させることに注力する。 なお、この修正仮説に関する研究報告の機会をすでに2026年初旬に確保できたため、遅くとも、この報告において、修正の是非と修正後の結論についてのフィードバックを得られる予定である。ただし、この修正自体が、申請者が2019年採択の研究課題以降で継続的に取り組んできた研究テーマ全体を通じての大きな修正となる可能性があり、かつ、本研究テーマにおいても、当初の結論とは反対の内容になる可能性も現状では否定できない。そのため、正確な論証ができるよう慎重に考察を進めている。 具体的に今後研究を推進する方策としては、一般的事案解明義務論が日本に紹介された際に、行政訴訟における説明責任に根拠を持つ(行政訴訟における)事案解明義務との違いをどのように意識されていたのかという視点から、学説の再整理、再定義を行っている。また、伊方原発訴訟以降の一連の裁判例についてもこの視点から再整理を行っている。その上で、2025年5月24日、25日開催の日本民事訴訟法学会において、関連テーマに関する報告もあることから、当該テーマに関心のある研究者の方々に、現状での私見を述べて方向性についての意見をもらうことを予定している。このフィードバックをもとにしつつ、一般的事案解明義務論がドイツにおいては行政訴訟における事案解明義務論とどのように関係しているのか(あるいは、関係しないと認識されているのか)を明らかにすることも並行して行う予定である。
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| Causes of Carryover |
2024年度の研究計画に前述の通り修正の必要が生じたため、従前に購入を予定していた文献のうち一部の購入を敢えて取りやめ、計画の練り直しを行った。また、おもに関西において開催される民事訴訟法研究会等において報告も行うことなどによる出張費の執行も一部取りやめることとなった。その代わりに、おもに出張の必要のない九州民事手続研究会や九州民事訴訟判例研究会の懇親会の場を利用して、仮説の修正の方向性について、参加者の方々にアドバイスや意見をもらう機会を積極的に作った。ただし、これらは出張の必要のない近郊での取り組みであるため、使用額は当初の研究計画より低くなる原因となった。 さらに、上記の研究計画の修正とは無関係に、対面での研究会に参加する予定として計画していたが、引き続きオンラインとのハイブリッド開催がなされることとなったため、実際に現地に赴く必要がなくなったことによる執行残も生じたことがもう1つの理由である。
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