2023 Fiscal Year Research-status Report
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23K01182
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
久保野 恵美子 東北大学, 法学研究科, 教授 (70261948)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 親権 / 子の利益 |
Outline of Annual Research Achievements |
親権の基本的性格や規律の考察の前提となる基礎作業として、親権者の懲戒権を定める民法822条の規定を削除し、新たな民法821条として、親権者に対して子の人格を尊重すること、子の年齢発達の程度に配慮することを義務づけたうえで、体罰その他子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならないことを明示するなど、親権の法的規律に大きな変更を加えた2022年の民法改正について、その内容及び意義を整理し、論稿にまとめることができた。 具体的には、同改正は、2011年に行われた親権法の改正において親権が子の利益のために行使されるべきとの指針が明示された流れの延長線上にありつつも、親権者による裁量の行使について上記のような諸義務や禁止事項を定めることによってその限界を具体的に定めたことの意義が非常に大きいことを明らかにした。その上で、まず、義務に違反した場合の効果があいまいであるとの課題意識のもとに、子の親に対する損害賠償請求の可能性があることを指摘したうえで、さらに、効果発生の有無を画する基準(すなわち裁量行使の範囲の限界づけの基準)の解釈適用を行っていくためには、不法行為法分野における注意義務違反の画定における解釈の方法、具体的には医師が専門的な裁量をもって行った治療行為の結果として損害が発生した場合の医師の責任を画する基準をめぐる議論などを参照し考察していくことが有益である可能性があることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
子の利益に制約された親権の規律を考察する前提となる基礎的な作業として2022年の親権法改正法の内容の整理、分析を行うことができたが、それを踏まえて所有権法理等を参照して考察を深める作業について、結果をまとめて公表することまではできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年に成立が見込まれる親権法のさらなる改正の内容と意義を整理・分析のうえ、親権の帰属と行使に係る規律について、ある者に親権が与えられることの根拠にさかのぼり、所有権と対照しつつ、考察し、論稿にまとめていく。
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Causes of Carryover |
遂行できた研究が改正法の基礎研究にとどまったため、成果発表のための研究会出席旅費及び文献購入費用の一部が未使用となった。 親権の帰属と行使に関する立ち入った研究を遂行したうえで、成果発表のための研究会報告を計画し、研究費の執行を進める。
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