2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K01274
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
片桐 梓 大阪大学, 大学院国際公共政策研究科, 准教授 (40964672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 哲郎 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (60455194)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 領土紛争 / 損失回避行動 / 中国 / ロシア / サーベイ実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
第二次世界大戦以降、領土紛争に端を発する戦争は歴史的には低水準で推移してきたが、近年国際関係において領土紛争への学問的・政策的関心が再び高まっている。中国の軍事力の増大と呼応するようにして顕在化する周辺諸国との領土・領海の帰属や主権の問題に加えて、今年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受けて、とりわけ権威主義体制国家の領土ナショナリズムの高まりに警戒感が表明されている。 領土紛争は、他の紛争事案に比べて、実際の武力行使や戦争につながりやすいことは多くの先行研究によって示されている。その一方で、領有権拡大が政策として選好され、国民の間に定着していく過程は、なぜ領土紛争が長期化し、武力紛争に繋がりやすいかを考える上でパズルの前提であるにもかかわらず、このメカニズムの検証はようやく端緒についたばかりである。 本研究では、プロスペクト理論における損失回避行動の枠組を用いて、失われた領土の認識が国民の領有権拡大への支持にもたらす影響を分析する。とりわけ1930年代以降、中国人の愛国心を涵養するために用いられたとされる、いわゆる「国恥地図」を用いて、中国が奪われた領土の範囲を実験的に操作することで、現在の中国国民の当該地域に対する領有権拡大及び政治的・経済的・文化的影響力行使への支持について調査を試みる。これに加えて、国土に関する地図を操作する類似の実験を日本、及びロシアにおいても行い、この因果メカニズムの外的妥当性の検証を行うことが研究の目的である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、中国での研究計画とビニエットを作成し、実験を実施するところまで作業が進んだものの、その段階において、中国における政治的なサーベイ実験をオンラインであっても行うことが難しく、内外の様々なサーベイ会社と調整が難航している。今後どのように研究を遂行するか現在共同研究者と相談しているが、中国で度々実験研究を行なっている研究者のアドヴァイスを得つつ、方向性を模索する予定である。場合によっては、ロシアで実験を行うことや、他の国際紛争関連の実験を行うことも視野に入れ始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後どのように本研究を遂行するかについて現在共同研究者と相談しているが、中国で度々実験研究を行なっている研究者のアドヴァイスを得つつ、方向性を模索する予定である。場合によっては、ロシアで実験を行うことや、他の国際紛争関連の実験を行うことも視野に入れ始めている。もし実験計画を変更する場合の具体的な実験内容については、本研究の方向性や問題関心に沿ったものに変更していく予定である。
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Causes of Carryover |
本研究はオンラインサーベイ実験の参加者への謝礼が研究費の大部分を占めることから、本年度実験を実施できなかったため次年度使用額が生じてしまった。計画を見直して実験を実施するため、余った額と次年度の予算については、次年度において使用する予定である。
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